服を脱ぎ、ゴミ箱に捨てる。
血がついた服は2度と着ない。
洗っても洗っても、臭いがついているような気がして嫌なんだ。
お風呂の鏡に映された裸の姿。
ナイフで刺された跡。
銃弾がかすった跡。
殴られた時の痣。
そんな私の体は、お世辞でも“綺麗”と言えない。
シャワーを浴びて、体の隅々まで綺麗に洗い流す。
血の臭いが残らないように何度も何度も、肌が赤くなってしまうまで擦り続けた。
お風呂から出て、言われた通り春樹の部屋に向かった。
ちなみに、春樹の部屋の隣に私の部屋がある。
ノックをしても返事がないため、勝手に部屋に入ると…春樹はベッドに寝転がり目を閉じていた。
春樹に近づき顔を覗くと、パチッと目が開いた。
そして、次の瞬間には腕を引っぱられ、春樹が私に跨がっていた。
あまりに速い動きに驚きを隠せない。
これだけは春樹と意見が合わない。
春樹が私を大切にしてくれている気持ちは凄く嬉しい。
だけど、私は男として江原組に入り、そして若頭補佐にまで上り詰めた。
それなのに、彼女だからと、春樹に守られるのは違うと思う。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。