第12話

白銀の元総長
3,097
2019/05/31 13:58
“松原祐美が白銀の姫になった”
そんな噂が学校中を騒がせた。
噂話をしてくる友達がいない私ですら、この話が耳に入ってきた。
けど、祐美に興味がない私にとってはどうでもいい話だ。
松原 佑
松原 佑
(そんなことよりも目の前のことが大事)
目の前には職員室のドア。
我ながらやってしまったと思う。
昨日、高嶺の授業で寝てしまった私は、放課後に呼ばれていることを忘れて、そのまま帰宅したのだ。

今朝のホームルームの時、あの高嶺が微笑みながら…
高嶺 純
高嶺 純
ハハハッ、松原。
今日の放課後に職員室来いよ?
先生、待ってるからな?
と爽やかに言われたのだ。
松原 佑
松原 佑
…(思い出すだけで寒気が…😵)
あれは気持ち悪すぎて全身に鳥肌が立った。
普段、まったくと言っていいほど笑わない高嶺が笑っている。
しかも爽やかに。
クラス中の誰もが恐怖を覚えただろう。








松原 佑
松原 佑
……(イライラする)
今日は仕事があるから早く帰りたいのに。

口に の中に入っている飴を噛み砕いた。


松原 佑
松原 佑
失礼します…
職員室のドアを開け、高嶺の姿を見つけて、そーっと背後に立つ。
松原 佑
松原 佑
昨日…ごめんなさい。忘れてしまい……ました
高嶺が驚いた様子で振り返る。
高嶺 純
高嶺 純
松原か!驚かさないでくれ
松原 佑
松原 佑
ごめんな…さい。存在感が薄くて…
高嶺 純
高嶺 純
あっ、いや。そういう意味じゃなくて…
高嶺が困った様子で私を窺ってうかがいる。
松原 佑
松原 佑
…このくらい困らせても罰は当たらないでしょ
イライラしていた気分が少し和らいだ。
松原 佑
松原 佑
先生…反省文を書けば…いいですか?
高嶺 純
高嶺 純
…あぁ。そうそう、反省文な
高嶺 純
高嶺 純
正直それはどうでもいい
松原と話してみたいと思ってな
松原 佑
松原 佑
はぁ…
反省文を書かなくていいなら帰らせてほしい。
話をしたいって、こんな時に話す内容って嫌な予感しかしない。
松原 佑
松原 佑
今日、用事があるのですが…
申し訳なさそうに早く帰りたいことを伝える。
…ホントは『申し訳ない』なんて思ってないけどね。
高嶺 純
高嶺 純
そうか。早く終わらせる。松原祐美は、お前の双子の妹で合ってるな?
松原 佑
松原 佑
はい…私の妹です
やっぱり、このことだ。
祐美が姫になんてなるから面倒なことが私にも回ってきた。
今まで私に興味を持たなかった高嶺が話す内容って、これしかない。
高嶺 純
高嶺 純
妹が白銀の姫になったのは知っているな?
松原 佑
松原 佑
噂では…聞きました。
高嶺 純
高嶺 純
そうか。家では会話とかしないのか?
松原 佑
松原 佑
あまり…仲が…よくないので
かばんから飴を取り出したい衝動しょうどうに駆けられるが、どうにかその要求を抑え込む
高嶺 純
高嶺 純
白銀は俺の後輩なんだ。
後輩を可愛がっている俺として、どうも気になってお前達を調べた。
妹を調べたら色んな情報が出てきたんだが、お前はあまりにも情報が少なかった。
松原 佑
松原 佑
(私のことを調べたのか…)
私の情報はある人が厳重に守ってくれているから流出することはない。
必要最低限の住所や生年月日くらいしか出てこないだろう。
だから、高嶺が私の情報に少しでも違和感を抱いたことは凄いと認めよう。
松原 佑
松原 佑
流石、白銀の元総長なだけある
松原 佑
松原 佑
そうなんですか?…情報とか…よくわからないです
高嶺 純
高嶺 純
別にお前のことを疑っているわけではないからな。
普通は弱点の一つや二つは出てくるもんなんだよ。
だからわざと情報を隠しているのかと思ったが…違っていたみたいだな。
松原 佑
松原 佑
(このダサい姿をしていて本当によかった)
松原 佑
松原 佑
(そのおかげでまったく疑われない)
高嶺 純
高嶺 純
今日、用事あるんだったな。
時間とらせて悪かった。
気をつけて帰れよ。
松原 佑
松原 佑
はい…失礼しました
職員室から出た瞬間、鞄からオレンジ味の飴を取り出し口に含む。
松原 佑
松原 佑
はぁ…

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