第18話

佑のホントの顔
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2019/07/13 15:33
松原 佑
松原 佑
ついでに私のサボり場、教えてあげる
ここで話していると誰かに見られてしまう可能性がある。
私は航を旧校舎に連れて行った。
横山 航
横山 航
なぁー。ここ、いつ来てもいーの?
航はここを凄く気に入ったみたいだ。
ソファーにもたれかかり、リラックスしている。
松原 佑
松原 佑
いいよ。私がいなくても使っていいけど…他の人連れてきたらダメだから。ここに入る時も誰にも見られないように警戒してね
横山 航
横山 航
そんなの当たり前じゃねーの
松原 佑
松原 佑
はい、これ鍵ね。一応、渡しておく
横山 航
横山 航
どーも
航は私の前で作り笑顔をしなくなった。
警戒しなくてもいいと判断してくれたのだと思うと嬉しい。
けど、私は完璧には信用していない。
私がいいと判断するまでは…私の領域に入らせない。
横山 航
横山 航
てーか、素顔見してちょーだい
航には変装していること、バレていたんだった。
でも、本当の私を見せることはまだできない。
横目で航を見ると、おやつを待つ子供のように目を輝かせていた。
松原 佑
松原 佑
(断るのも胸が痛むなぁ…)
松原 佑
松原 佑
…メガネ取るだけなら
私がそう言うと少し不服そうな表情をしたが、なんとなく理由を察してくれたみたいだ。

私はメガネを取り、ブレザーのポケットに入れる。
長くて邪魔くさい前髪を後ろにかき上げた。

視界が一気に広がる。
松原 佑
松原 佑
(…眩しい)
横山 航
横山 航
えっ…
航は口を半開きにして間抜けな顔をしている。
…まぁ、普通に考えて祐美が整った顔をしているのに双子の姉が不細工ぶさいくなはずがないでしょ。

…認めたくないけど、顔の造りは祐美とそっくりだ。
横山 航
横山 航
ちょーっと待ってよー……そっくりじゃねぇーの
松原 佑
松原 佑
双子だからね
正直、自分の顔が嫌いだから嬉しくない。
仕方がないけど祐美とそっくりな顔が大嫌いだ。
鏡を見るたびに嫌になる。
だから、小学生くらいから自分の顔を前髪で隠している。
似ていると誰にも言われたくなかったから。
航は無言で近づいてくると、ポケットに収めていた眼鏡を取って私にかけた。
松原 佑
松原 佑
…何すんの。航が見たいって言ったくせに
横山 航
横山 航
い、いやー、心臓に悪いのよー
瞳を左右に揺らし、分かりやすく動揺している。
常に余裕があり、表情には出さないであろう航が顔を赤くしている。
松原 佑
松原 佑
祐美で見慣れてるでしょ
呆れたように私が言うと、航はムッとしてねた。
横山 航
横山 航
いや、そっくりだけどよー……佑の方が色気がやべーのよ。それに佑の方が美人
松原 佑
松原 佑
…それは、どーも
航は再びソファーに腰掛けて、赤くなった顔を手であおいでいる。
やはり祐美とそっくりと言われるのは気分のいいものではない。
私はそれ以上何も言わず、航が落ち着くのを待ち、授業に行くことにした。
松原 佑
松原 佑
そろそろ教室に行くけど、航はまだここにいる?
横山 航
横山 航
俺も行くー。俺さ、佑と同じクラスなのよー
松原 佑
松原 佑
……初耳なんだけど
横山 航
横山 航
んー、やっぱり?授業全く受けてないからー、まさかと思ったけど、やっぱ知らなかったのねー
クラスのことを教えてくれるような友達はいないし、それは知るはずがないよね。
松原 佑
松原 佑
教室では話しかけないで、虐められていても助けなくていいから
横山 航
横山 航
……あぁ。でも、俺が助けるべきだと判断したら迷わず助けるからねー
松原 佑
松原 佑
(航は優しい奴だな。本当に白銀には勿体もったいない)
人に対して疑い深い私が航を信頼し始めている。これには自分でも驚いている。
松原 佑
松原 佑
ん、そこは任せる
横山 航
横山 航
りょーかい
航は不敵に微笑んだ。
これがモテる要素なのだろうと理解した。
普通の女なら惚れるだろう。
…だから顔が整っている人はずるい。
何しても絵になるんだもの。

一緒に行っては怪しまれるので、航が出て5分後に私は教室に向かった。
教室に近づくにつれて、女の叫び声が聞こえてくる。
多分…いや絶対、航のファンが騒いでいるのだろう。
ドアの前に立つと、いつもの数倍うるさい教室に入るのが憂鬱ゆううつになった。
松原 佑
松原 佑
…はぁ、、

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