笹本がそう言うと、陽太は私を睨みつけて渋々手を離した。
やっと肺に空気を取り入れることができたけど
息苦しさのあまり、床に座り込んでしまう。
そんな私に、ゴミを見るような視線を向けてくる幹部たち。
そんな考えがチラリと脳裏を過る。
笹本奏多。
副総長なだけあって、1番冷静に話ができるみたいだ。
永瀬が言うから、仕方なく従っているのだろう。
私の物言いが癪に障ったらしく、永瀬と陽太が殺気を向けてきた。
一応、怖がっているふりをする。
陽太が苛立ちをぶつけるように誰も座っていないイスを蹴り飛ばすと、勢いよく私の足に当たった。
それと同時に航が動き出そうとしたので、目頭手を止める。
私を助けることは、白銀を裏切ること。
まだ航の出る場面ではない。
そう言うと、永瀬は私を乱暴に引きずって外へ出た。
幹部部屋のドアが閉まる瞬間、佑美が奥の部屋から顔を覗かせた。
その歪んだ笑顔に気づいたのは、私と航と笹本だけ。
永瀬が叫ぶと、下っ端の中でも体格の大きい男が5人出てきた。
永瀬が、乱暴に私を5人の前に放り投げた。
陽太は、今から起きることが嬉しくて仕方がなさそうに笑っている。
笹本は、複雑そうな顔をしている。
そして、航は…今にも飛び出してきそうだ。
5人がゆっくりと距離を縮めてくる。
憎々しそうに私を睨みつける。
今からこんな奴らに殴られなきゃいけないのかと思うと、憂鬱になる。
でも、これさえ終われば面倒事が片付く。
少し我慢すれば全て丸く収まるんだ。
大きく息を吐いて覚悟を決める。
倉庫に来た時点で、こうなることは分かっていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。