白銀の倉庫まで航のバイクに乗せてもらうことになった。
私を後ろに乗せるからと、凄く安全運転をしてくれるのはありがたい。
だけど、あまりにも遅すぎて後ろに渋滞ができて、かなり恥ずかしかった。
私は心に決めた。
二度と、航の運転するバイクの後ろには乗らないと。
白銀の倉庫は中々大きく、手入れもしてあり綺麗だった。
外にはたくさんのバイクが並んでいる。
入口には見張り役の男が2人いる。
2人は私に気づくと軽蔑したような目で見てきた。
航が顔に笑みを貼りつけて、見張り役に手を振る。
すると、男たちは嬉しそうに姿勢を正して綺麗に
お辞儀をした。
倉庫に入ると、航に気づいたら下っ端が元気に挨拶する。
これを見ただけで、航がみんなから好かれているのが分かった。
返事をしながらも航は歩みを止めず、奥に見える幹部部屋へぬかう。
航の後ろに隠れていた私にやっと気がついた下っ端が騒ぎ始めた。
隠れているとはいえ、気づくのが遅い。
こんな至近距離にならないと気づかないなんて白銀は大丈夫なのか。
私だけに聞こえる声で伝えてきた。
幹部部屋のドアに手をかけている航の表情が少し硬い。
安心させるように私が微笑んでみせると、航はいつもの緩い笑みを浮かべた。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。