前の話
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――その日、私はやっとそのことに気がついた。
現在私は中学一年生。
季節は春の終わりごろである、6月。
ようやく慣れてきた教室で見たのは――
好きな人の話題で盛り上がっている女子たち。
そして、男子にからかわれている一組のカップル。
そう、恋愛ムード一色の空気だった。
私――あなたは、それまでずっとまだ恋なんて早い!と思っていた。
けれど、その光景を見てからは強く「恋がしたい!」と思うようになった。
でも、クラスにいい男子――好きになれるような――はいなかった。
それに、「好きな人を作る方法」も分からない。
そこで私は、三人の親友――荒田 奈々、佐川 琴音、十文字 莉緒と協力して、「好きな人を作る方法」を探すことにしたのだった・・・
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「恋がしたい!」と強く思った次の日。
ちょうど学校が休みだったので、さっそくみんなを私の家に招いて会議を開いた。
なんだか話題がずれてるけど、楽しいからいっか!
まぁ、メンバーを紹介しておきましょう。
目の前で騒いでいるのが、奈々。
さらさらの髪をポニーテールにした、委員長気質の女子だ。
奈々を宥めていて、ほんわかオーラが出ているのが、琴音。
紺色の少しふわふわした髪を下ろしていて、かわいいんだ。
私たちは、幼稚園の頃からの親友。
ずーっと4人で固まって行動していた。
でも、もうひとりの親友――莉緒は、最近不登校になってしまった。
莉緒は栗色の髪をツインテールにしていて、モデル並にかわいい。
おばあちゃんがどこかの会社の社長らしいんだけど、詳しくは知らないんだ。
今日も誘ったけど、来てない。
なんか寂しいな・・・と、思ったそのとき。
――ピーンポーン
家のチャイムがなった。
私たちは顔を見合わせる。
私の家に来ていたのは、莉緒だった。
事情があって遅刻したんだって。
元気そうで、ちょっとホッとする。
奈々が驚いた表情のまま固まっているのが少し面白い。
ちょん、とつつくと戻ってきた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!