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数ヶ月前、城にある一人の男が囚われた。
目が赤く、人間とは思えないほどの力を持つという。
地下牢獄の中、彼は一人で囚われていた。
みんなが寝静まった私はいつものように一人で城の中を歩く。
いつもなら行かない場所なのに、今日は吸い込まれるように足が向く。
鉄格子の外から彼の手をそっと触れる。
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あれから彼が気になり、何度もあの場所へ足を運ぶ。
人目を盗んで、、何度も。
するとある日、お父様にそれがバレてしまう。
腕を、足を、頬を、、力で、自由を奪われる。
暴力という名の鎖で、逃れられない。
それでも、何度でも、彼の所に足が向く。
ただ、ただ、、彼に会いたくて、、。
心配されたくなくて、服で隠してたはずだったのにすぐに見つかってしまう。
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彼のためならなんだって出来る。
厳重に保管されてるお父様の鍵箱。
寝ている横を通り、そっと入る。
でも、彼の言っていた鍵は見つからない。
思い返せば、お父様が首から何かをかけていた。
寝室に向かえば、まだ眠っている様子。
首元から小さな鍵が一瞬見えた。
そっと、、そっと、、。
気づけば冷たい目で私をみるお父様。
いつもなら怖くて動かない身体。
でも、今しか彼を助けられない。
お父様の鍵を奪い、その場から走り出した。
後ろから兵士も多く追いかけてくる。
急いで彼のところに向かった。
投げた鍵は鉄格子の中に入ったものの鎖で囚われた彼の手には届かない。
{お嬢様っ、!}
追ってきていた兵士に捕まえられる。
大柄な兵士に捕まれて身動きが取れない。
すると後から追いかけてきた父親に捕まってしまう。
強い力で腕を掴まれ逃げれない、、そう思っていたら、どこからか風が吹き牢獄の火が急に消えた。
瞬く間なくカラスがやってきたかと思うと、彼の周りを取り巻く。
{ば、化け物っ!}
カラスが一気にいなくなれば、囚われていたはずの彼の鎖がなくなっていた。
そして、黒い大きな羽が彼から見えた。
強い風が吹いたと思えば、周りの人達が飛ばされていく。
彼に抱きしめられ、空に浮かぶ。
彼に包まれれば、自然と安心できた気がした。
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目を覚ますと、知らない場所にいた。
見上げれば綺麗なピンク色の花が一面に咲いていた。
すると、どこからか遠くで彼を呼ぶ声がした。
みんなから驚くように見つめられる。
連れて行かれたのは、大きな城。
大階段から降りてきた優しそうな男性が降りてきた。
王様は私に近づいてそっと手を握ってくれた。
彼の部屋に連れていかれると、優しく抱きしめてくれた。
頬に手を伸ばして触られる。
ソファに座り、そっと撫でられると痛かったはずのアザは消えていた。
髪を耳にかき上げられ、見つめたままそっと唇が重なる。
柔らかくも温かい初めて味わうキス。
その優しい言葉で孤独だった私が解放されて行くような気がした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。