はぁ、と一つため息をつく。
お前たちも女になって、さっきみたいな目にあえばいいのに。
ふたりでヒョイッと持ち上げる。
やはり魔物にしては軽いのか、簡単に
持ち上がった。
ボソボソと呟きながら片付けに入る。
これまた軽そうによくわからないカバンやらなんやらを持ち上げてどこかに去って
しまった。
私はるぅとを手伝うつもりでいた。
しかし、行こうとしたところで腕を
引っ張られる。
なんだか、拗ねたような顔をしているので、廊下に出て話すことにした。
思わず素っ頓狂な声を出す。
魔王…いや、さとみを倒しに城に入った時に最初に目についたのは目玉だった。
なんだあれ、気持ち悪いな…と。
さとみの説明によると、アレは人間の貴族が使う「防犯カメラ」というものの代理だそうだ。すべての部屋や廊下に一匹おり、
常に録画しているのだとか。
例えば、さっきの所で助けにくるとか。
そう不機嫌そうに言うと、ごめん、と小さく言ったのが聞こえた。
いや、ガチで謝られると…変な感じだな。
キョトンとした顔で見返してくる。
よくよく見てみれば、私のイメージしていた魔王とは一風変わっている。
もっと禍々しく、ずる賢い悪。
声はガラガラで超低く、話すことだけで大地がゆれる、みたいな。
でも全然違った。
純粋で優しくて、感情の上下が半端ない。
声は男にしてはキレイで、常に少し鼻に
かかった甘い声である。
村や帝国にこんないい声の美男子がいたら…モテまくりだというものだ。
今思えば、なんでこんなやつが倒されなきゃいけないんだろう。
よくよく考えてみれば、コイツらが犯した罪なんて私を捕らえたことくらいだ。
それ以外に何かをしたこともない。
倒す必要なかったりして…ね。
…あれ、私洗脳されてる?
戦闘意志を削ぐ、新手の会話系魔術だったりして?
そんなことにまた笑ってしまい、なんだが…ほのぼのとした空気になっていった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。