伝説の勇者が捕まった。
それは瞬く間に国中に触れ回り、人々を
悲しませた。
城にて…
涙目になりながら大臣は訴える。
そう、あなたは大臣の娘なのだ。
とある国民が叫ぶ。
勇者に助けられた人ばかりと必死に訴える。
すると。
ブーッブーッと超大型テレビが震えた。
そこには顔の整った魔王が映っている。
ぽっと顔を染める姫と、その婚約者。
なんだかもういろいろとカオスである。
そう言って中継は途切れた。
…はい、というわけで小さな勇者がうまれ、勇者奪還が始まりましたとさ。
その頃、魔王城…
あなたside
いま私は、布で口を覆われている。
息はできるが、喋ることが出来ない。
周りには、前から敵だと教え込まれてきた
魔王軍幹部。
中心の玉座には魔王が座り、その周りに幹部がいるのだ。
悪魔の一人が近づいてきて、布を取る。
ヴァンパイアがニヤリと笑って私を見つめた
他の奴らもニヤニヤと笑っている。
そう言ってジャック・オ・ランタンの王子だという少年(いや、私より上か?)が魔王を肘でつついた。
思わずその様子に拍子抜けする。
気だるそうだし、戦っていた時と違う。
【回想】
スライムやお化けなどは沢山いたけれど、
なかなか強い敵に会わなかった。
そのせいか、目の前にいる二体の魔物の妖力に驚くしかなかった。
シュン、と音をたてて私の背後にまわる。
一瞬の出来事で、頭も体も追いつかなかったのが敗因だった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!