壁を走るように向かってくる。
そして壁を蹴って私のところに飛んできた。
空中でギュッと抱きしめられ、驚く。
顔をあげると莉犬くんは涙目で、今にも泣くかのような表情をしていた。
シュタッ
地面に降り立ち、ゆっくりおろされる。
怖かったからか腰が抜け、へたりこんだ。
俺がいなかったら死んでたかもしれないのに、と泣きながら言う。それはそうだ。
これは流石にお礼を言わなきゃいけないな。
お礼を言われて照れたのか、人差し指で頬を少しかいた。私が言うのもなんだが、笑ったり泣いたり忙しいヤツだな。
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城の中に入り、ふと思ったことがある。
…脱出目的どこにいった!?
あまりのことに驚きすぎて忘れていた。
そして食堂につくと、ななもりとるぅとが
シュンとしていた。
そばに居るのがさとみであるあたり、たぶん叱られたのだろう。
すると、さとみが近づいてきた。
なんだ、妖気が強いやつが近づいてくると
つい身構えてしまうんだが。
さとみは俺より15から20センチくらい大きくて、見上げる形になってしまう。
肩をガシッと掴まれているので、すごく目を合わせずらい。
それよりも、だ。
人質にして何かを求めるわけでも無い…?
てっきり、戦を有利に進める捕虜や人質だとばかり思っていた。
それ以外の理由…なんだろうか。
まさか…食料にされて食べられる!?
いや、殺すつもりもないって言ってたしソレはないか。
後ろからガラガラした声が聞こえてきた。
ヤギだろうか?
っていうかこの物語のツッコミってあなたの
はずだけど、とメタい話をしている。
面倒なことになりそうなのて無視しておく。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。