第22話

十八話
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2020/01/22 10:28
あなたside

コンコンコン…
ベッドに突っ伏して不貞腐れていると不意にドアをノックされた。
少し驚いてフリーズしてしまった。
ななもり。
ななもり。
今いる?大丈夫?
あなた

あぁ…ななもりか。
入ってもらって平気だぞ

ななもり。
ななもり。
失礼しまーす
部屋に入ってきたななもりはいつも通りだ。
どうやらマタタビも抜けきったようで、顔色も普通である。
ななもり。
ななもり。
ごめんね、莉犬くんから聞いたよ。結構暴れてたみたいだね…
あなた

まぁな。私も手がつけられなかった

しゅんとした後にごめん、と一言。
別にそんなに気にしてなかったが。
あなた

…ななもり

ななもり。
ななもり。
どうしたの?
あなた

私、怖いんだ

ななもり。
ななもり。
なにが?
首を傾げる。
私は吐き出すようにボソッと言った。
あなた

私のせいでお前らの関係を
壊してしまったら…って。

ななもり。
ななもり。
私は自分の手のひらを見つめ、話し続ける。
あなた

私の手は、いつも何かを壊す。
助けたくても、助けきれない。
だからまた、絆っていう形の糸
を断ち切ってしまうんじゃ…
なんて、考えてたんだ。

ななもり。
ななもり。
そっか
いつの間にか近くまで来ていたななもり。
思わず驚いて突っ伏した状態から顔をあげてななもりを見上げた。
ななもり。
ななもり。
でも、俺らはあなたが来てくれて嬉しいよ?あなたの勘違い、かもしれないよ?
それにさ。
そう言ってななもりは私の手を取った。
いつの間にやら浮かんでいた涙を拭うことが出来ず、雫が頬を伝っていく。
あなた

う…ななもりっ…!!

自分が捕らえられた側だったことも忘れて、必死にななもりの名を呼んだ。
そうでもしないと自分が消えそうな気がしたから。

…ななもりに、行って欲しくなかったから。
ななもり。
ななもり。
泣きたい時は泣いていいんだよ。生き物は一人じゃ生きられない。だけど…あなたはほぼ一人だった。そうでしょ?
だから、さ。頼りたいなら俺達を頼りなよ…?
あなた

ぅ…あぁあ…

ななもりは私の頭をポンポンと撫でて
くれた。幼子をあやすような仕草だったが…
とても、安心した。
細いけれども意外と大きなその手は、とても温かくて、私のことを落ち着かせてくれた。
ななもり。
ななもり。
大丈夫。俺がついてるよ。
それに…簡単には切れないよ。
俺達の絆?とかいうのは…
あなた

…そうか。そうだよな

グスン、と鼻を鳴らす。
情緒不安定だったのもあるが…
久しぶりだな、ちゃんと泣いたのは。
あなた

すまない…

ななもり。
ななもり。
ううん。いいんだよ。
あと、忘れないでね?
これからは辛い時は俺達がいるってことを。頼れる人がいるってこともね。
あなた

あぁ、ありがとう。
人前で泣いたのは初めてだ

ななもり。
ななもり。
アハハw
じゃあ、俺があなたの
泣き顔を見た第一号ね!
あなた

なんだそれw

…魔物にもやっぱり良い奴はいるんだな。
こうやって笑わせてくれたり、心を開かせてくれたり。


心の奥底から感謝した。
ななもり。
ななもり。
じゃ、その用事だけだから…
おやすみ、しっかり休んでね
あなた

あぁ。本当にありがとう…
お前も、ちゃんと休めよ?

ななもり。
ななもり。
はいはい
それだけ言ってななもりは部屋を出ていく。
私はと言うと、することもなかったから…
部屋の片付けをしていた。






翌朝へ続く…

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