あなたside
コンコンコン…
ベッドに突っ伏して不貞腐れていると不意にドアをノックされた。
少し驚いてフリーズしてしまった。
部屋に入ってきたななもりはいつも通りだ。
どうやらマタタビも抜けきったようで、顔色も普通である。
しゅんとした後にごめん、と一言。
別にそんなに気にしてなかったが。
首を傾げる。
私は吐き出すようにボソッと言った。
私は自分の手のひらを見つめ、話し続ける。
いつの間にか近くまで来ていたななもり。
思わず驚いて突っ伏した状態から顔をあげてななもりを見上げた。
それにさ。
そう言ってななもりは私の手を取った。
いつの間にやら浮かんでいた涙を拭うことが出来ず、雫が頬を伝っていく。
自分が捕らえられた側だったことも忘れて、必死にななもりの名を呼んだ。
そうでもしないと自分が消えそうな気がしたから。
…ななもりに、行って欲しくなかったから。
ななもりは私の頭をポンポンと撫でて
くれた。幼子をあやすような仕草だったが…
とても、安心した。
細いけれども意外と大きなその手は、とても温かくて、私のことを落ち着かせてくれた。
グスン、と鼻を鳴らす。
情緒不安定だったのもあるが…
久しぶりだな、ちゃんと泣いたのは。
…魔物にもやっぱり良い奴はいるんだな。
こうやって笑わせてくれたり、心を開かせてくれたり。
心の奥底から感謝した。
それだけ言ってななもりは部屋を出ていく。
私はと言うと、することもなかったから…
部屋の片付けをしていた。
翌朝へ続く…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。