第32話

二十七話
17,952
2020/06/28 04:18
ななもりside



ふわっとした魔術がその場にいる全員の体を包み込む。その魔術は俺の身体の力をしゅうしゅうと音を立てて吸い取っていく。
ななもり。
ななもり。
くっ…!?
さとみ
さとみ
な…んだこれ…!?
俺はがくんと膝を床についた。そして気を失い…



しばらくして、目覚めた。
妙に天井が高く感じる…なんでだろうか。
起き上がるとなんだかクラクラした。頭に手を当て…
ななもり。
ななもり。
!?
驚いた。
手がこれでもかというほど小さい。
まるで幼子のふっくらとした手のようだった。
莉犬くん
莉犬くん
な、なんだろこれ…
隣にいた莉犬くんは、子供に変わっていた。まさかと思って自分を見下ろし…絶句した。
俺も小さい子供だ。テーブルさえも大きく感じるほど縮んでしまったらしい。
ころん
ころん
なぁんでぇぇぇ(´;ω;`)
これじゃああなたもさがせないじゃんかぁぁぁぁあ(´;ω;`)
るぅと
るぅと
ころちゃん、おちついて!
人間で言うところの七歳くらいだろうか。
ご丁寧にも、服まで一緒に縮んでいる。
ジェル
ジェル
これ…あなたのことさらってったヤツのまほうなんかな?だったらこのまほうのにおいをたどればいけるんとちゃう?
莉犬くん
莉犬くん
たしかに!
おれのきゅうかくがあればいけるよ!
皆の顔がパァっと明るくなる。
体が小さくなったのは不便だが、そういう意味では魔法をかけられたことは良点だった。
さとみ
さとみ
よし、いくか!
全員
おーっ!
全員で手を握りしめ、天に突き立てた。


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あなたside
あなた

はぁ…することもないのがこんなに退屈だとは知らなかったな。

カルマ
カルマ
勇者サマのアンタも暇には弱いんだね。
あなた

五月蝿いぞ

久しぶりに解禁するこの言葉遣いは相手を警戒している時に使う言葉だ。
そんな私を見て、ふん、と鼻を鳴らす。
カルマ
カルマ
んじゃ、アンタにいいもの見せてあげるよ。ほら。
さとみが持っていたような骸骨型のなにかを取り出しスイッチを押した。
ウィン、と音がして、壁にさとみ達が映し出される。
しかし、何かがおかしい。
あなた

皆…子供?

カルマ
カルマ
あっははははははは!!!
突然の高笑いに驚き、そちらを見る。
するとカルマは顔を手で覆って、クックック…と喉を鳴らして笑っていた。
カルマ
カルマ
マヌケだ…昨日の夜にあんなにわかりやすく魔法を掛けてやったのに…ククッ、天下の魔王様が気が付かないなんてなぁwww?
ククッ、あっはっは!!
あなた

貴様…!!

楯突いたって、今マスターソードは魔王城にある。
何もできやしないのだ。
己の無力さにひたすら空虚感が体の中を漂っていた。

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