トコトコ走ってくる楓。
ほんとに愛らしい
どてっと転ぶ。
自分の部屋に行って、俺が小さい頃よく遊んでた
猫のぬいぐるみを取って、もう1回戻る。
さっきまで泣いていたやつが突然変異のように、
笑顔になる。
しばらく遊んで、疲れたのか俺の膝を枕に
寝てしまった。頭を撫でていると父さんが来た。
俺には兄貴がいる。俺とは比べ物にならないほど、
優秀な人だ。だから、後継も兄貴だ。
旦那にならないと、自分の好きな子を嫁には出来ない。
この子が好きなら、俺は…
その日から俺はら、楓を嫁にするため、
いつも以上に稽古に励んだ。
稽古場の窓から俺を呼ぶ楓。
練習がきつくて、つい楓に当たってしまう。
やべ…言いすぎたって思った時には遅かった。
泣くのを我慢してるのか、声が震えてる。
タッタッタッと走っていく楓。
急いで追いかけたけど、楓の家はどこの家か
分からなくて、途中で帰ろうとした時だった。
道路に落ちていたのは、俺があげた猫のぬいぐるみ。
「ずっと一緒!」って言ってたから、落とすわけがない。
その日の夜
ピーンポーン
(ガラガラ
俺のせいだ。楓はきっと…!
一日が明けたあと、楓は無事見つかった。
俺は謝りに行こうと、楓がいる病院に行った。
(コンコン
俺は絶句した。楓は所々に傷があって、声は震え、
俺の顔を見て、こう言った。
悔しくて、情けなくて、辛くて。
自分のせいで、楓は誘拐されて、傷ついた。
俺はもう、楓の傍にいる資格はないのかもしれない。
俺は全部話した。
そうしたら、瑛翔はこう言った。
俺は、この日から決めた。
君が忘れててもいいから、今度こそ守ってあげようって。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!