おにぃはさっきの事を引きずるように、暗い表情だったけど、そらはケロッとしていた。
それが腹立って、私は手に持っていた荷物を置いて家を出た。
ここまで、怒る必要は全くないって思った。なのに、体が勝手に動いていた。
そして、私は川原へ行って石を水の中に投げていた。
思い出が少しずつ蘇り始めた。
私は、いじめから助けてくれたそらのことが大好きだった。そして、思いは募るばかり。
そらのいる学校まで走って毎日一緒に帰ったり、頑張った。
だけど、ある日そらからもう一緒に帰れないと告げられ、何があったのか跡をつけた。
すると、、隣には小柄で可愛い女の人が楽しそうに歩いていた。
その頃だ。私の気持ちが消えていったのは。
もう、恋は多分しないだろう。思った。
そして、今その通り、恋はあれからしていない。
あの時、おにぃには軽く話していた。
そらのことが好き。、、と。
おにぃは、うーーん、と考えながら微笑んでいいんじゃない?と答えてくれた。
今思えば、懐かし話だ。
そんな、ことを思っていると、、
後ろから、今一番顔を合わせたくない人の声が聞こえた。
みんなが橋の方から私の名前を呼んでくれていた。
探しに来てくれたらしい。
えいちゃんのことを呼ぼうとすると思い切り口を手で覆われて息が詰まった。
唇が触れた。
私はこのまま走って、家へ戻った。
みんなには連絡をして、帰って来てもらった。
そして、何もなかったかのようにこの1日が終わっていった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!