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第11話

Stage2-5
塔上 沙良
塔上 沙良
(……平凡……よりはちょっとだけマシかな)
目をそらして、そんなことを思う。
王子 宇瑠
王子 宇瑠
ショコラティエにとって一番大事なのは、センスとオリジナルなアイデアなんです。もちろんカカオの香りを生かす高度な技術も必要なんですけど、風味や食感だけじゃやっぱりだめで……
塔上 沙良
塔上 沙良
ふうん
王子 宇瑠
王子 宇瑠
あ、ごめんなさい。興味ないですよね、こんな話
塔上 沙良
塔上 沙良
まあ、甘いものはけっこう好きだけど
そう答えると、彼女はぱあっと顔を輝かせた。
王子 宇瑠
王子 宇瑠
じゃあ、この近くに『Mimi』っていうショコラ専門店があるので、ぜひ! わたしのおじいちゃんのお店なんです
塔上 沙良
塔上 沙良
気が向いたらね。まあ話はなんとなく分かったから、ランニングをやめたらとは言わないけど、せめて夜はちゃんと早く寝たほうがいいんじゃないの?
王子 宇瑠
王子 宇瑠
そうなんですけど、夜は夜で勉強が
塔上 沙良
塔上 沙良
ああ。赤点とったとか?
王子 宇瑠
王子 宇瑠
ちがいますっ! やりたいことやるには、いろいろクリアしなくちゃいけないハードルがあるんです。おじいちゃんのショコラと、ドルチェのイベントが人質にとられてるんで
塔上 沙良
塔上 沙良
は?
王子 宇瑠
王子 宇瑠
条件があるんです。親からの。わたしのおじいちゃん、最高のショコラティエなんですけど、いろいろあって、お店やめようかなぁなんて言うから、わたしちょっとでもおじいちゃんのこと助けてあげたくて、お店のお手伝いしてるんです
よっぽど好きなのだろうな、と思う。
そのおじいちゃんのことも、ショコラのことも、お店のことも。
表情でわかる。
王子 宇瑠
王子 宇瑠
でも、お店のお手伝いをするせいで成績が下がったらダメだって、お母さんが
塔上 沙良
塔上 沙良
まあそうだろうね、学生なんだし。で、ドルチェのイベントも成績が下がったらいけなくなるんだ?
王子 宇瑠
王子 宇瑠
はい。ぜったいそれはイヤなんで! 寝不足では死なないけど、風真くんにあえなかったら死んじゃうんで!
塔上 沙良
塔上 沙良
…………ふーん
真剣な顔でぐっとこぶしをにぎる相手を、冷ややかに見る。
塔上 沙良
塔上 沙良
そんなに風真が好きなんだ? ボクのブーケを叩き落とすくらい
彼女は「あっ!」という顔をした。
それからすこし顔を赤くして、ぺこぺこと頭をさげる。
王子 宇瑠
王子 宇瑠
あれは……わざとじゃなくて、でも、ごめんなさいっ
塔上 沙良
塔上 沙良
ボクに気がつかないくらい夢中って顔だったしね
王子 宇瑠
王子 宇瑠
はいっそうなんです! 夢中でした! もう風真くんしか見えなくって!
塔上 沙良
塔上 沙良
……
泣きそうな顔が、こんどはパッと明るくなる。
そのキラキラとした目に、なんだかむっとした。
王子 宇瑠
王子 宇瑠
もちろんドルチェ全体を応援してます。がんばってください! ――それじゃあ、失礼します
もう一度頭をさげて、彼女はランニングに出かけて行った。
ヴーッヴーッとスマホが鳴る。
話をしているあいだも、何度か鳴っていた。
けれど彼女は「電話に出たら?」というようなことを一言も言わなかった。
そのことに、自分でも不思議なくらいほっとしていた。
もしかしたら彼女は沙良がスマホを捨てたところを見ていたから、なにかあるのだろうと察して、気をつかってくれたのかもしれない。
着信が止んだすきに、バイヴレーション機能を切る。
ほんとうなら、着信自体を拒否にしてしまいたいくらいだった。
けれども、そうするとすぐに飛行機ですっ飛んでくるだろう。
よけいなことはしないほうがいい。
塔上 沙良
塔上 沙良
……いいかげん子離れしてよね
舌打ちをして歩き出す。
塔上 沙良
塔上 沙良
ん……?
裏通りに出る手前に、なにか落ちている。
ひろって見れば、それは『王子宇瑠』と名前の書かれた小さなメモ帳だった。