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第4話

Stage1
クラスメイト
ねえねえ宇瑠(うる)、アンタ将来の夢は?
王子 宇瑠
王子 宇瑠
……うーん特にないけど
クラスメイト
ええぇ~、ウソないのぉ?
王子 宇瑠
王子 宇瑠
えーとじゃあ……あえていうなら公務員、とかかな……?
クラスメイト
なにそれ超堅いじゃんウケる~
王子 宇瑠
王子 宇瑠
(そんなにウケるかな。人の夢って……)
そうモヤモヤしながらも、クラスメイトたちといっしょになって空笑いをしていた、あのころの自分。
けっとばして、ゴミ箱に捨てる。
もう、サヨナラだ。
***
王子 宇瑠
王子 宇瑠
あ、あああのっっ、大ファンです!
心臓がバクバクいってる。
王子 宇瑠
王子 宇瑠
(わわ言えた、言えた言っちゃった! 顔、わたしの顔ヘンになってない? 大丈夫!?)
顔が熱くてホントに火が出そう! 恥ずかしい!
王子 宇瑠
王子 宇瑠
(でも、ついに言えた!)
王子 宇瑠おうじ うるはよろこびに震えながら、そっと手をにぎってくれている相手を見つめた。
王子 宇瑠
王子 宇瑠
(ふ、風真くん……ダメ、ま、まぶしい!)
手をにぎってはいるが相手はカレシでもなんでもなく、アイドルだ。
宇瑠がこの数か月にわたって追いかけている、大大大好きな新アイドルグループ『ドルチェ』のメンバー、白雪風真。
年齢は中三である宇瑠のひとつ上の、高校一年生、十五歳だ。
王子 宇瑠
王子 宇瑠
(ふあああ! 風真くん、キレイなのに笑顔がめっちゃイケメン……あ、あれ、なんか神すぎて涙が……)
感動しすぎてボロボロ涙がでてくる。
どうしようドン引かれる! と焦ったけれど、風真はやっぱり神だった。
白雪 風真
白雪 風真
泣かないで?
そっとハンカチで涙をぬぐってくれる。
王子 宇瑠
王子 宇瑠
(え、なんだろうこれ、現実?)
まわりからも「キャー!」という悲鳴なのか歓声なのかわからない声があがった。
白雪 風真
白雪 風真
君、俺たちがデビューしてから、ずっと応援にきてくれてるよね。俺のうちわ持ってさ
王子 宇瑠
王子 宇瑠
(ウソ!? お、覚えてくれてた……!!)
神推しに存在を覚えてもらえた。
こんな幸せって、あるだろうか。
***
王子 宇瑠
王子 宇瑠
――ない。ぜったいにない! 今日がわたしの人生最高の日!
握手会のあと、宇瑠は自宅マンション近くの小さなお店にいた。
『chocolatier Mimi(ショコラティエ ミミ)』。
チョコレート職人(ショコラティエ)である祖父の、チョコレート専門店だ。
ローストしたアーモンドを使った、アマンド・ショコラ。
オレンジピールにショコラをコーティングした、オランジェット。
ヘーゼルナッツのペーストを使った三層のショコラ、クレミーノ。
国産ドライフルーツをふんだんに使った、マンディアン。
トリュフに生チョコレート、そして一番人気のボンボン・ショコラ。
宝石みたいにぴかぴかの特製ショコラたちがならんでいる。
奥には小さなカフェスペースもあって、ショコラショーと呼ばれるチョコレートドリンクや、祖父じまんのスペシャルテコーヒー、そしてチョコレートケーキを楽しめるようになっていた。
祖父
まだ人生五分の一も生きてない中学三年生が、なにを言っているのかねぇ
ショーケースにできたてのショコラをならべながら、祖父が苦笑する。
祖父
ああ、宇瑠。そっちのテーブル拭いてくれるかい?
王子 宇瑠
王子 宇瑠
はーい
この『Mimi』は小さなお店だから、祖父と祖母のふたりきりでずっと切り盛りしてきた。
けれど、昨冬のこと。
その祖母が転んで腰をいためて、お店に立てなくなってしまったのだ。
祖父はすっかり元気をなくして、もうお店をたたむなどと言いだしたものだから、大好きな祖父母と大好きな『Mimi』のため、宇瑠がお手伝いを申し出た。
以来、週末の学校が休みの日は、こうしてお店に立っている。
祖母が用意してくれた制服も、クラシカルなメイド服調でかわいくて、とても気に入っていた。
王子 宇瑠
王子 宇瑠
――おじいちゃん、何年生きたかとかカンケーないんだよ? 風真くんがわたしを知っててくれた。風真くんがハンカチで涙をふいてくれた……! ああ、これを幸せって言わないでなにをいうの? 幸せすぎて明日死ぬのかも……っ
カフェスペースのあいた客席をかたづけながら、幸せにうち震える。
するとそれをきいていた常連客の花江さんが、フォンダンショコラを食べる手を止めて顔をあげた。
花江さんは、いかにも品のよさそうなご近所のマダムだ。
花江
宇瑠ちゃんは、よっぽどそのナントカっていうアイドルが好きなのね。春からずっとその話ばかりだものね
王子 宇瑠
王子 宇瑠
ドルチェです。これからどんどん伸びるアイドルですよ!
花江
写真とかあるの? どれ見せてごらん
言われて、宇瑠はいつも持ち歩いている風真の缶バッチをとりだした。
王子 宇瑠
王子 宇瑠
この人が白雪風真くんです
花江
まあ、かわいい女の子ね
王子 宇瑠
王子 宇瑠
ちがいますよ! 風真くんは男の子です!
抗議すると花江さんは目をぱちくりする。
一緒にコーヒーをのんでいた、おなじく常連客の猫田さんも「どれどれ」とのぞきこむ。
猫田さんはシルバー頭をきれいになでつけた老紳士だ。
猫田
なんだい、このべっぴんさん、男なのかい。時代は変わったものだねえ
花江
なに言ってるのよ猫田さん。わたしらが若いときだって、メイクしてる男のアイドルがいたでしょう
花江さんが言うと、猫田さんが「いたねえ!」と手をたたく。
そこから昔のアイドルについて二人で話がもりあがりはじめたので、宇瑠はカウンターの内側にもどってカップを洗うことにした。
祖父
――最近、元気なようで安心したよ
ショコラをならべ終えた祖父が、コーヒー豆をひきながら、宇瑠に向かってぽつりという。
祖父
中学に入ってから、ずっとなんだか元気がなかったようだったからね。まえはよく店に友だちを連れてきていたのに、それもなくなってしまったし
王子 宇瑠
王子 宇瑠
……うん。でももう大丈夫。心配しないで
にっこり笑うと、祖父は安心したように、しわしわの目を細くした。
王子 宇瑠
王子 宇瑠
(そう。もう大丈夫)