その日の帰り道…
少し用事があって、学校に居残ってた私は、みんなと帰りが遅れてしまった焦りで、駆け足で階段を降りた。
あの3人には、「"仲良く"先に帰ってね」
とは言ってあるから急ぐ必要もないんだけど。
軽い足取りで下駄箱へ向かうと、
なんて聞きなれた声が、正面から聞こえて思わず靴を履く手を止めて顔をあげる。
するとれんは、クスッと笑って、
あの2人が付き合ってるの、てっきり忘れてた。
れんは、ニコッと笑顔を見せる。
靴を履いた私は、れんを抜かし早足で歩く。
少し後ろから、れんがそう小さく叫ぶ声が聞こえた。
本当は少し嘘…
れんが待っててくれて嬉しいの!
少しだけね…
うん。少し少し…
***
ケースに入った大好きな棒アイスを指差して、れんの方をむく。
私は、れんの言葉に頷いた。
そして、ケースからアイスを2つ取る。
ひんやりとしたケースの中は、ずっとこの中にいたいくらい気持ちよかった。
れんはレジ前に行き、素早く会計を済ませた。
お店の外に出ると、もわんとした熱風が再び私達を襲う。
額の汗が滴り落ちる。
れんは、汗を服の袖で拭いながらそう呟いた。
私達は近くの公園に足を進めた。
公園へ来るとブランコに腰掛けた。
ブランコに座ると、私は久しぶりの感覚に公園を眺める。
右から左へと視線を流すと、
頬に冷たい何かが当たった。
顔に当たったものがアイスだと分かるのに少し時間がかかった。
私は、いつも通りパッケージを開けると…
"ぺちゃ"
アイスは無残に私の足元に落ちた。
すると、れんはかじったアイスを私に差し出した。
「ん」と、れんはグイッとアイスを私の口前に運ぶ。
そりゃ。お言葉に甘えたいけど…
それって、間接キス…みたいな感じじゃん!?!?
"間接キス"なんて言葉、言えるわけない。
恥ずかしすぎる。
"シャリっ"
れんが、私の口に押し込んだアイスが綺麗に私の口に入った。
れんは、少し頬を赤く染めてそう言った。
私は、アイスを流し込むと
早口でそう言った。
アイスを食べると、何故か無言が続く…
その沈黙を破ったのは、
"ピロリロリン"
私の電話の着信音だった。
画面を見ると"たいが"の文字が。
私はれんに視線を送った。
なんで、れんといること知ってるんだろ…
そんなことを思いながら電話を切ると、
するとれんは、何かを思い出したかのように
と言った。
れんは、ブランコから離れると公園の外に足を進める。
私は、れんを追いかけるようにして駆け足で公園をあとにした。
***
すると、たいがは顔を真っ赤にして"コクン"と頷いた。
少し意地悪っぽくれんに、そう聞いてみる。
軽い雑談をしてたら、たいがの部屋に着いた。
私とれんは、ちょこんと床にに座る。
れんは、何故か知ってますよ感を出しつつ無言で私と見つめる。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。