格子にかけた手は震えている。
怖い。
本当は怖いよ。
私は弱いから。
強くないから。本当はできない。
でも、みんなをぐちゃぐちゃにしてるのは?
みんなを濁してるのは?
消えないといけないのは?
鳥肌が立つ。
風が強くて、少しフラつく。
"ダンッ"
一瞬にして、いぶが蹴飛ばされた。
許せない。
柿原先輩も。
自分も。
許せない。
『もう許せない_』
今の声は…
片手にスマホを持ったたいががどこからか現れた。
いつの間に…突然の登場に驚きを隠せない。
先輩は必死だ。作りキャラ。絶対バレてんのに。
たいがの突然の登場に、私は何も言葉にできない。
いぶは…気を失っているみたいだ。
助けにいきたいけど、取り巻きがこちらを囲むから。
すると、たいががゆっくり私に近づいてきた。
何故か取り巻きはスっと退いた。
私の真横にたいが歩み寄る。
すると、たいがはスマホを胸ポケットに入れて、
"プチッ"
私の腕をとり、私の制服の手首のボタンを器用に取る。
たいがは、私の腕まくり、痣だらけの私の腕を先輩に見せつける。
すると次は、たいがが私のスカートを持ち、クイッと少し上にあげる。
少し恥ずかしい。
たいがは、私の頭をゆっくり優しく撫でた。
こんな状況なのに、たいがは強い。
少しもひるまない。
先輩はやけに上手い作り笑顔をむける。
たいがは、クスッと笑った。
少し違う。
このたいがは、いつもと違う。
怖い。
すると、
"グイッ"っとたいがに腕を引かれる。
気づいたら私は、先輩に背を向けるような状態でたいがに抱きしめられていた。
耳にかかる吐息がくすぐったい。
そう言うと、たいがは自分の胸ポケットから少し出ているスマホを指さした。
胸ポケットからカメラ部分だけ覗いたスマホに、?マークが浮かぶ。
すると、たいがは私の体をそっと離した。
そう言いながらたいがは、スマホを胸ポケットに戻す。
取り巻きにそう指示を出したものの、ついさっきまで態度が大きかった取り巻きも、さすがにひるんでいるようだった。
すると柿原先輩が一瞬にして、私の元にやってきて、
"グイッ"っと胸ぐらを掴んだ。
私は持ち上げられて、少しかかとが浮いている状況。
首が…痛いっ…
怖く幽霊みたいな顔をした先輩は私をもっと高く持ち上げようとする。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。