第44話

*あの時、
466
2019/10/25 11:32
たいが
たいが
僕のあなたに触れるな。
どっかの英雄が言うようなくさい言葉。
俺には到底似合わない。
でも、情けない姿をあなたには見せたくなかった。
柿原先輩
柿原先輩
へえ、今たいがくん。
「なんでもする」って言ったわよね。
先輩がニヤッと笑う。
柿原先輩
柿原先輩
じゃあそのスマホ、捨てて壊して。
そして私と付き合いましょう?ね?
たいが
たいが
…はぁ。
俺は指示に従うことしかできなかった。
風に煽られながら、よろけそうになりながら、俺はスマホを捨てた。
たいが
たいが
スマホはこれでいいですか?
柿原先輩
柿原先輩
もちろんよ。やっぱりたいがくんは物わかりがいいわね。
そう言うと先輩は俺の頭を撫でた。
その汚い手を払いたかった。
でも…女に手はあげられなかった。
あなたがすごい形相でこちらを見ている。
全てが申し訳なくなった。
柿原先輩
柿原先輩
付き合うんだから、たいがくんから私に告白してくれないかしら?
たいが
たいが
はぁ?
意味がわからない。
俺をどこまで追い込むのか、予想のつかない怖さだった。
柿原先輩
柿原先輩
ねぇ?そう思わない?あなたちゃ〜ん?
ね?ね?でしょ?
的がまたあなたに行った。
あなた

自分のことしか頭にないヤツに同情できるかよ…クソが…

喉の奥から締め出したような苦しい声で、痛そうにそう口にした。
柿原先輩
柿原先輩
はぁ?なんですって?今なんて言った?
先輩の反感を買った。
こんな強気で、苦しそうなあなたは初めて見た。
柿原先輩
柿原先輩
まぁいいわ。じゃあたいがくん…
お願いね♡
たいが
たいが
…。
どうするべきか、分からなかった。
指示に従わないと、あなたがどうなるかわからない。
でも…嘘でも言いたくない。
「好き」なんて言葉を、しかも「好きな人」を横に置いて。
あなたはしゃがみ、お腹を抱えながら苦しそうにしていた。
これ以上何かされれば、あなたの命が危なかった。
たいが
たいが
…はぁ。
たいが
たいが
先輩…
乾燥した喉が口の中で張り付く。
あなた

…!?

ぐしゃぐしゃになった髪の毛の間から覗かせたあなたの目は、大きく見開いていた。
たいが
たいが
先輩…すk_
あなた

ちょっと待って!

あなたが、あなたが立ち上がって俺を止めた。
先輩は驚いたあと、鬼のような形相になった。
柿原先輩
柿原先輩
なによ。文句でもあるわけ?
あんたには関係_
先輩があなたの元へ足を進めた。
止めたかった。
怖くて足が震えて、動けなかった。
情けなかった。
苦しかった。
柿原先輩
柿原先輩
ないでしょっ?
"ドン"
と鈍い音がした。
あなたは風に煽られ、よろけて、格子に寄りかかる。
その瞬間だった_
風に煽られたあなたの体はふわりと浮き、急に姿を消した。
俺は格子に駆け寄り、そこに落ちていくあなたを見た。
たいが
たいが
あなた!!!
叫ぶことしか出来なかった。


















































しかし…

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