店長さんの大きな手に頭を撫でられる。
もうバレてたんだね、先輩。
柿原先輩の不器用…!
私は綺麗な涙を流した。先輩の意思で。
私は俯き首を振る。
そう言われた私は目を覆い、泣きながら立った。
もはや身体のコントロールは100%先輩に持ってかれた。
そして、私は店長さんの大きな腕に包まれていた。
幸せムードが静かに流れた。
意地悪な先輩も色々あって変われた。
こんな恋…私もしてみたかった。
たいがと…いや…れんかも…。
すると私はゆっくり店長さんの腕を離して…
言うはずのないセリフを口から出し、遊具の外へと出た。
さっきまで出ていたはずの月はいなくなって、代わりに冷たい雨が優しく降っていた。
半泣きの柿原先輩が空に向かって、そう叫んだ。
聞こえますよ、先輩…!
次の瞬間、視界が真っ暗になった。
***
みやがうんうんと頷きながらこちらを見ている。
また戻ってきた。
病院のベッドに真っ白な空間。
あと、嫌な奴。
そう聞くとびっくりした顔をするみや。
そう言ってみやは、ベッドの下から「取扱説明書」と書いた分厚い本を出した。
そしてペラペラとページをめくっている。
みや…ただそれ説明書読んでるだけじゃんって…
あれ、なんの説明書だろう…
私はみやから取扱説明書を奪おうと身体を伸ばした。
ひょいとみやは高く飛んだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。