第29話

償い、
698
2019/04/20 06:47
煌店長
煌店長
ねぇ、志摩子ちゃん…いや
煌店長
煌店長
こう呼んだ方がいいかな…!
煌店長
煌店長
夏梅…?
店長さんの大きな手に頭を撫でられる。
志摩子
志摩子
なんでその名前をっ…
もうバレてたんだね、先輩。
柿原先輩の不器用…!
私は綺麗な涙を流した。先輩の意思で。
煌店長
煌店長
ふふっ、僕は魔法使いだからね♪
煌店長
煌店長
ねぇなんで僕が夏梅に声をかけて、僕のお店に呼んだのか分かる…?
私は俯き首を振る。
煌店長
煌店長
君が…綺麗だったから。
志摩子
志摩子
えっ…
煌店長
煌店長
本当だよ?
煌店長
煌店長
夏梅…立って?
そう言われた私は目を覆い、泣きながら立った。
もはや身体のコントロールは100%先輩に持ってかれた。
そして、私は店長さんの大きな腕に包まれていた。
煌店長
煌店長
あいつに渡すもんか…
僕が幸せにするよ、夏梅…
煌店長
煌店長
好きです。
志摩子
志摩子
…店長。私も…
幸せムードが静かに流れた。
意地悪な先輩も色々あって変われた。
こんな恋…私もしてみたかった。
たいがと…いや…れんかも…。
すると私はゆっくり店長さんの腕を離して…
志摩子
志摩子
でもちょっと待っていてください…
言うはずのないセリフを口から出し、遊具の外へと出た。
さっきまで出ていたはずの月はいなくなって、代わりに冷たい雨が優しく降っていた。
志摩子
志摩子
あなたちゃん…?
半泣きの柿原先輩が空に向かって、そう叫んだ。
志摩子
志摩子
聞こえる?私の中のあなたちゃんっ!
聞こえますよ、先輩…!
志摩子
志摩子
本当にごめんなさい…馬鹿よね私。
志摩子
志摩子
幸せになろうとしている…
許されないわ、こんなこと。
抜け駆けするなんて…!
志摩子
志摩子
本当は!私があんなことしていなければ、今頃…あなたちゃんといいお友達だったかしら?
志摩子
志摩子
そんなあなたちゃんの大事な未来も私が消してしまったの…!
志摩子
志摩子
ごめんなさいじゃたりないわ…
天罰だけでもたりないわ!!
志摩子
志摩子
私は幸せになってはいけないと思うの!
志摩子
志摩子
罰よ、罪を犯した自分への罰。
だからね…私!
店長の言葉…拒否しようと思う!
志摩子
志摩子
本当は受け入れたいけど…
志摩子
志摩子
もういいの…店長に迷惑かけたくないし!あの変態野郎と結婚するわ!
志摩子
志摩子
これが私の償いよ…
ごめんなさいあなたちゃん。
志摩子
志摩子
私は高校生の時から成長していない。
志摩子
志摩子
馬鹿で最低で自己中心的で酷い女…!
志摩子
志摩子
死んだ方がマシなのかも!
志摩子
志摩子
でも…私を…私を許して…
志摩子
志摩子
人殺しの私を許してっ…!!
次の瞬間、視界が真っ暗になった。
***
みや
みや
後味、悪っ
みやがうんうんと頷きながらこちらを見ている。
また戻ってきた。
病院のベッドに真っ白な空間。
あと、嫌な奴みや
みや
みや
なんかドロドロだったね、あの先輩!
みや
みや
いやぁ〜女って怖い怖い。
あなた

ねぇ質問していい…?

そう聞くとびっくりした顔をするみや。
みや
みや
いいけど…?
あなた

なんで私が身体を操れる時と、操れない時があるの…?

みや
みや
えぇ〜そんなことないんだけどなぁ。
そう言ってみやは、ベッドの下から「取扱説明書」と書いた分厚い本を出した。
そしてペラペラとページをめくっている。
みや
みや
あぁっ。そんなことあったわ。
ん〜とね、あなたちゃんが身体に入っている人いるじゃん?まぁさっきで言えば、その先輩?特定の人物だね。
あなた

うん。

みや
みや
通常であれば、その特定の人物の身体をあなたちゃんが操れるのよ。通常であれば。
みや
みや
あ、あと〜心の中で話しかけてくる人は、その特定の人物だから。
みや
みや
ん〜とね!何かバグが起きると、操れなくなるらしい〜ねっ!
みや
みや
例えば特定の人物の気持ちがキャパオーバーになったりすると、バクとみなされるって。
みや…ただそれ説明書読んでるだけじゃんって…
あれ、なんの説明書だろう…
私はみやから取扱説明書を奪おうと身体を伸ばした。
みや
みや
おっと〜これは見せられないよ〜
ひょいとみやは高く飛んだ。
あなた

なんでよ。

みや
みや
まぁまぁ。
じゃあさ、俺の質問にも答えてよ!
あなた

何?

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