あの頃、私の周りは沢山の友達で溢れてた。
***
こんなに人気者になっちゃったんだ。
私は、胸を踊らせながら辺りを見渡す。
私の周りには、人、人、人。
人と言っても、女子が大半を占めていた。
緊張した時に出るいつもの癖で、髪の毛を耳にかける。
いつもと違う、似合わないかなってくらいの可愛い服を着て、落ち着かない足をひたすらその場で動かす。
それでも落ち着こうと足を止め、大きく深呼吸をした。
それと同時に思い出されるのは、高校時代のこと。
あの人との出会いが、私の人生を変えた。
***
5年前の春。
私は、家から近いという理由だけで選んだ高校に入学した。
慣れない制服を見にまとった私。
これから始まる新しい生活への期待と不安で心が埋まってく。
自分の席を確認して、ゆっくりと座った。
窓側の1番後ろの、日当たりのいい席。
隣の席の人はまだ来てない。
中学のときに仲良い子も違う高校行っちゃって、ほぼ0スタート。
中学の時も、友達は多くはなかったらか、
なかなか自分を出せないでいた。
隣の席の人…女の子だといいな。
なんてことを考えながら、外を見た。
満開の桜の木の下に、たくさんの生徒。
あれを人は、『青春』というのだろうか?
わいわい騒いでる何人かの生徒を私は机に肘をつき、虚ろな目でみる。
すると、
"トンっ"
と、肘に硬いものが当たった感触がした。
右を見ると、見たことの無い男子が。
よく相手の顔を見ないで私はそれだけ言うと、また視線を桜の木にやった。
私は反射的に、声のする方を向く。
そういうと、私の隣の席の人はリュックの中から本を取り出し読み始めた。
見覚えのある表紙に私は本の釘付けになる。
私が読んでる本だ…
私の声に隣の席の人は顔をあげて、私と目が合う。
そして、ニコッと笑った。
"キュン"
と胸がはじけた。
はじけた?
うん、はじけた。
はじけただけ。
私は、恥ずかしくなって視線を下に落とす。
はい、聞こえてます。
私の心臓の音が邪魔するけど。
1人の男の子の声が、私に向かって飛んできた気がしたので私はゆっくり顔を上げた。
顔を上げると声をかけてきた男の子と、隣の席の男の子が私を見たいた。
愛想が良くて、優しそうな男の子は「れん」と名乗る。
向日葵のような眩しい笑顔を私に向けた。
れんが、たいがくんと呼んでいた男の子に視線を送る。
食い気味にたいがくんがそう言った。
たいがが、軽く会釈する。
れんが、私の顔を覗き込む。
こう見ると…
れんは、フレンドリーだけど、
たいがくんは、コミュ障?っぽい。
知らない女の子が、れんの隣の席に座る。
女の子は、元気な笑顔を見せた。
いぶは、私に手を差し出し握手を求める。
私は、その手を取り握手をした。
れんは相変わらずのフレンドリーっぷりだ。
たいがは…私と似てる。
いぶが、少し不安そうに聞く。
こうして、充実した学校生活が始まる。
はずだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。