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第7話

過去と告白。
夢を見た。

もう何度も見たことのある夢。


まだ五歳の俺。

いつものように母に殴られ、泣いている。

もう慣れたことだったのに。


その日は母の様子が本当におかしかった。

アルコールを大量に摂取したのか、ふらふらして呂律すら廻っていない。

でも意識だけははっきりしていたようで、ぶつぶつ何かをずっと呟いていた。

かろうじて聞き取れた言葉。

「どうして借金抱えてるだけで私の人生ボロボロになるの..。みんな私を責める。私を責める..。もう嫌だ。死にたい。....」


母が大量の借金を抱えていたのは知っていた。

でもそれを責められているというのは初めて聞く。

すると、急に何か思い付いたように狂って笑い出した。

「そうだよ..死ねばいいんじゃん。..空利、勿論あんたも一緒にだからね。」

「え..。」

突然で驚きすぎて返す言葉も見つからない。

「当たり前でしょ。
てかそもそもあんたなんて産まなければ良かった。あんたのせいで何もかも無くなる。
だから今度は私があんたの大切なものを全部奪ってやる。」

父が金を持って出ていったことは母がいつも言っていた。


今でも覚えている。

毎日ずっと俺を殴り続け、家にはいつも俺の悲鳴や泣き声が響いていた。

ある日、宅配を届けに来た人に偶然俺が父に殴られているところを見られたらしい。

警察に通報されることを恐れた父は、
「もうお前らなんて要らない。」
と何とも卑劣な言葉を投げ捨てて、家にある全ての金だけを持ち、家を出ていった。
しばらく心の奥に閉まっていた思い出を振り返ると、
次には炎が見える。

母はもう見えない。

あぁ、ここで死ぬんだって絶望したとき、
「君!大丈夫かっ?」
と、男の人たちが俺の元へ駆けてきた。

担架で家から運び出される。

運び出される途中で見えたのは、ほぼ全焼と言えるくらい焼けてしまった家だった。

そこからの記憶は曖昧だ。



はっ、と目が覚める。

身体中、汗でびしょびしょだった。

外はまだ薄暗い。

枕元に置いてあったスマホの電源を入れて、時間を確認するとまだ5時だった。

もう一度、寝付こうと思ってももう眠れない。

いや、眠りたくないのだろう。
また同じ夢を見たくないから。


パジャマにしている学校のジャージでそのまま部屋のドアを開けて外に出る。

「寒い..。」

まだ六月。やはり朝方は少し寒い。

音を立てないように東側の階段の方へ向かう。

階段の手前にあるドアを開け、ドアの向こうへ進んだ。

冷たい風が頬をかすむ。

ドアの向こうはベランダになっていて、
俺の好きな場所の1つだ。

ここを知っているのは俺ともう一人..。

「空利..?」

「啓介..。」

啓介は囲っている柵にもたれ掛かるように立っていた。

「空利も眠れなかったのか?また、夢で。」

「うん..。啓介は?」

「俺はただ単に早い時間に起きただけ。」

「そっか..。」と言って、啓介の隣に立つ。

啓介は優しくて、こんな暗い過去を背負っている俺を受け入れてくれる。

そういうところが昔から好きだった。

「..あの、さ。この前は悪かった。」

「この前..?あ..。」

先日の夜のことを思い出して、その時の啓介と楓の顔も思い出す。

「目の焦点が合ってないような目..。」

「え..?」

「あ、あぁ。ごめん。つい声に..。」

「..ごめんな。やっぱ怖がらせたよな。」

「本当、自分でもらしくないことしたと思う..。」と啓介が遠くを見て、呟く。

そんなことないよ、なんて言えなかった。

しばらく沈黙が続く。

ここに来て30分ぐらい経っただろうか。

ずっと何かを言いたげな啓介が、やっと口を開いた。

「空利、さ。昨日、保健室に居たろ?」

「え..。」

保健室、というとあの刺激的な行為を思い出す。

悪い予感が頭を遮った。

柴原先生は貧血引きずって休むと学校側に言っといてくれたが、保健室に居たとは言っていないだろう。

どうして知っているのか..、ドクンドクンと心臓が異常な速さで動く。

「..実はさ、昨日見たんだ。」

何を、なんて聞けない。

悪い予感が的中した。

青くなって何も言わず、俯いていると..、

「..あの、さ!あれは、お前の意志でしたことなのか?それとも..。」

自分の意志かどうか..、望んだことではない。
でも先生達に無理矢理、とは何故か言えなかった。

「もし後者だったら..、俺はっ..。」

「啓介..。」

「ほんと、ごめんな。人のこと言えないよな。」

何て返したらいいのか分からない。

すると、ずっと俯いていた俺を啓介は後ろから抱き締めた。

「俺、さ。ずっとお前のこと友達だと思ってたけど違ったわ。」

「え..。」

啓介の吐息が耳にかかってくすぐったい。

「..俺さ、お前のことが好きだ。」

「好き」、好き..?

突然の告白に頭の中が混乱する。

「..順番違うよな、ごめん。」と言い残して、
啓介はベランダから出ていった。