俺は何もできない。
主を慰めることも、撫でてやることも、声をかけてやるのも。
全部。
主は笑顔が取り柄だった。喋ることが好きでよく笑っていた。
だけどある日を境にその笑顔は作った笑いになっていた。
そう笑ってはいる。目は笑っていない。
苦笑い。感情のない笑い。
主は泣いていた。誰もいない部屋で一人。
俺は画面の中だ。主を見守ることしかできない。
ある時、主は何かを検索していた。
俺は主がいないときにこっそりと検索履歴を見てみた。
ゲーム関係や動画関係など主の好きそうなのばかり。
そのなかでひとつ
[消えたい]
という文字。
ふと思って調べた言葉なのかそれとも意図的に調べたものなのか
俺にはわからないが多分そう言うことなんだろう。
俺は考える。ここでできることを。
動画検索で目につきそうなのを置いておく
主の好きそうな画像も置いておく。
通知も来るように…
少しでも気が紛れるといいのだが。
俺は後願うしか方法はない。
言葉は届かないだろうけど
『主、どうか無理はされないでください。』
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。