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第4話

全力
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2018/07/15 09:11
全力でビンタした。
イラついたから。
つい、本能で。
普通は怯えたりするのかもしれない。
けど、そんなのとうの昔に慣れた。
やっと解放された右腕を抑え、
シエ
…私はあんたのものにならない。
冷たく、蔑んだ目で伝えたはずだ。
それが逆効果だった。
ラカ
…新しい扉開いたわ。
シエ
死ね。
こんな鼻血を垂らした間抜けズラのやつ。
私ならすぐに殺せたはずだ。
こんな…こんなみじんこ…
ラカ
…失礼。さ。行こうか。
シエ
っ!
差し伸べられた手を払い除けた。
ラカ
君はこの館から出ることはできない。
シエ
…そんなの…でたらめだ。
ラカ
なんなら窓から飛び出してみるか?
今いる廊下のつきあたりにある
少し大きめな窓を指差しながら問いかけられる。
もしかしたら『その窓』にだけ
なにか仕組みがあって出られないのかもしれない。
それを確かめるべく、背後の窓を
突き破り、たちまち私の体は宙を舞って、
シエ
はは…出れるじゃんか_
間抜けなみじんこに笑いかけ。
目をつぶった。
そこからは記憶がない。
無意識に死を恐れて気絶してしまったのかもしれない

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