全力でビンタした。
イラついたから。
つい、本能で。
普通は怯えたりするのかもしれない。
けど、そんなのとうの昔に慣れた。
やっと解放された右腕を抑え、
冷たく、蔑んだ目で伝えたはずだ。
それが逆効果だった。
こんな鼻血を垂らした間抜けズラのやつ。
私ならすぐに殺せたはずだ。
こんな…こんなみじんこ…
差し伸べられた手を払い除けた。
今いる廊下のつきあたりにある
少し大きめな窓を指差しながら問いかけられる。
もしかしたら『その窓』にだけ
なにか仕組みがあって出られないのかもしれない。
それを確かめるべく、背後の窓を
突き破り、たちまち私の体は宙を舞って、
間抜けなみじんこに笑いかけ。
目をつぶった。
そこからは記憶がない。
無意識に死を恐れて気絶してしまったのかもしれない
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。