第28話

27.返信
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2023/03/12 15:58
アスレ制作時間を終え、空のオレンジ色が深い藍色に溶け落ちる頃。

明かりのついた静かな部屋、花瓶の赤いポピーは新しい水を吸い込んで、生き生きと上を向いている。

あなたは、ベッドに寝そべったままスマホの画面と睨めっこしていた。
あの後、通話アプリのディスコードでおんりーからフレンド申請が届き、フレンドになることに成功したのである。

今連絡がとれる、たったひとつの手段だが。
(なまえ)
あなた
んー、話したいけど…何から話せばいいかわからない…
どう声をかけたらいいかと、かれこれ30分ほど布団の上で唸りながら転がったり座り直したりしている。
というか、こんな有名実況者に一般人の私が気軽に声をかけて良いんだろうか…
その時、ピロンっと通知音とともにスマホが振動した。
(なまえ)
あなた
ひ!?
今までずっと黙って睨めっこしていたスマホが突然鳴り出して、驚いてスマホを宙に投げ出してしまいそうになる。


相手は、まさに今メッセージを送ろうと悩んでいた相手のおんりーであった。
おんりー
おんりー
"あなたさんであってるかな?"
(なまえ)
あなた
(え!うわあああ、おんりーの方から連絡をもらってしまった…!)
息も忘れて、現実であるか確かめるようにその文面を何度も読み返す。

おんりーは、自分があなたであることを確信しているようだ。
気づいてもらえていた。
こうして連絡がとれることに、胸も目元もじんわり熱くなる。

何度も打ち直しながら、あなたはおんりーへ返信を送った。
(なまえ)
あなた
"あなたです!気づいてくれてありがとう
今日はありがとうございました!"
数十秒で返事が返ってくる。
おんりー
おんりー
"こちらこそ、お疲れ様"
ああ、なんて返信しよう。

変に思われないように、でも堅くならないように言葉を選び、ぐるぐると回る頭で必死に冷静を保ちながら画面をタップした。
(なまえ)
あなた
“もしお仕事の合間に時間があれば、お話しませんか?”
今日はもう日が落ちて、夕飯やお風呂など自分のことで忙しいであろう。

彼は夜も活動時間、なるべく彼の時間に合わせたい。
しかし、その返信は予想外のものだった。
おんりー
おんりー
"できれば、今大丈夫なら少し話したい"
それはあなたにとって、心臓の音を鳴らすには十分すぎる言葉だった。
(なまえ)
あなた
"大丈夫!話せます!"
震える指先でそう返信して深呼吸をすると、慌ててイヤホンを探した。

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