第21話

21.日常
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2022/04/02 16:50
目覚まし用の音楽とスマホの振動音で、あなたは目を覚ました。

重い瞼を上げて体を起こす。


陽の光の差す窓。いつもの自分の部屋、いつもの目覚まし。

目覚ましを止めてスマホの通知を見ると、昨日のドズル社の動画の通知や、ツイッターの通知が重なっていた。
(なまえ)
あなた
私…
マイクラの世界に入り込んでしまい、おんりーに会ったこと、エンドラを倒したことを思い出して、慌ててツイッターを開いた。

いつもと変わりなく、自分のツイートした覚えのある投稿は昨日の日付になっている。

おんりーのツイートも更新されていて、特に変わったことはない。
(なまえ)
あなた
夢…?
洗面所へ行き、自分の姿が写った鏡を見て息を飲んだ。
(なまえ)
あなた
髪には、赤いポピーが差してある。

紛れもなく、おんりーにもらったポピーだ。
(なまえ)
あなた
違う…夢じゃなかった…?
"また会うよ"


おんりーの言葉を思い出す。

未だに現実だと信じていいかわからず、それでも確かに残る記憶に心臓がドクドクと音を立てる。
(なまえ)
あなた
会いたい…今度はちゃんと会いたい
でも、どうやって…
おんりーは有名な実況者。

SNSのメッセージ機能を使っても返事がある確率はほとんどないし、ファンレターだってスタッフさんが目を通す。

マイクラの世界で会いましたなんて伝わりそうではないし、怪しまれそうで迂闊に声をかけることはできない。
(なまえ)
あなた
私がここにいることを、どうやって伝えよう…
ふと時計を見ると、朝の8時半を指していた。
(なまえ)
あなた
やば、今日仕事…!
ポピーの花を小さな花瓶に差し、ドタバタと準備をして家を出る。


駅の改札を通り、ホームに立って。

そんな日常の通勤をもう何年もしていないくらい昔に感じて、何度も道やホームを確認しながら電車に乗った。


今日から、またいつもの日常へ戻る。

あなたは必死に地に足をつけて、電車に揺られていた。


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