第23話

23.ポピーの花に寄せる想い
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2022/04/16 04:27
【おんりーside】
ドズル
ドズル
じゃあお疲れ様〜
おらふくん
おらふくん
お疲れ様でーす!
ぼんじゅうる
ぼんじゅうる
お疲れっす〜
おおはらMEN
おおはらMEN
お疲れ様っす
おんりー
おんりー
お疲れ様でした
撮影を終えてドズル社メンバーとの通話を切ると、おんりーは伸びをした。

すぐにピロンと通知の音がして、メッセージを確認する。
おらふくん
おらふくん
"おんりー最近疲れとる?無理はいかんで!"

おらふくんからの心配の一言だった。

先程のエンドラ討伐系企画の撮影で、おんりーらしからぬミスが続いてしまったのだ。

ネザーでロッドを持ったままマグマダイブしてしまったり、エンドラ戦でリスポーン設定を忘れ落下死してしまい、初期位置に戻ってしまったり。

やらかしぼんさん以上にやらかしていたのである。

おんりーもそういう時だってあるよ、とドズルさんは励ましてくれたが。


確かに最近、活動に集中できていないところがあった。

というより、焦っているのだ。

あなたさんとまた会うことを約束し現実世界へ帰ってきてから、ひとつも彼女と連絡を取る手段を確保できていない。


実況者というのは思ったよりも身動きが取れないものだった。
おんりー
おんりー
"ありがとう"
それだけおらふくんに返信してスタッフさんからの連絡メールに目を通すと、毎週収録しているパルクールマップの連絡がきていた。
おんりー
おんりー
(ポピーの花に寄せる想い…?)
脱出系みたいなタイトルのマップだな。

少し一人でプレイしたかったし、パルクールマップの下見に取り掛かることにした。



砂漠から始まり、爆発で地下の洞窟へ落とされるギミックを通る。

ブロックとりんごが手に入り、ブロックを置きながら地上へ向かってテンポよく登っていく。

村を駆け抜け、ネザーイン。
おんりー
おんりー
(あれ、このりんごは何に使うんだろう)
不思議に思いながらりんごを使う要素の見当たらない赤森を、ホグリンに追われながら走り抜ける。


そして、マグマの流れる滝でマグマボートチャレンジ。

おんりーにとったら、それももう手馴れたもの。

3つのボートを使ってテンポよくぴょんぴょんと移動する。

しかし、最後のボートを使った直後向こう岸は見えなくて、一気にマグマの海へ向かって落ちる。
おんりー
おんりー
え!なにここ?
マグマに浸かった瞬間に耐火がついて、焼け死ぬこともなくリスポーンもできずに浮いたまま止まってしまう。

そういえばパルクールマップの説明を添えてくれたスタッフさんの文章に、途中のマグマでは下へ進むような指示があった気がして、あえてマグマの中へ沈んでみた。
おんりー
おんりー
あ、なるほど
どうやら正解だったようで、下の空洞からネザーを出て今度はエンド要塞。

シルバーフィッシュがわらわらと出てくるコースを抜けて、暗いエンドの世界観に変わる。
おんりー
おんりー
(エンドラ討伐でもしに行くかのようなマップだ)
難しい配置のエンドストーンブロックを走り抜け、ゴールらしきエンドラの祭壇。
おんりー
おんりー
え…
思わず立ち止まった。

いつかこのコースを辿ったことがある気がして、冷や汗のようなものが出てきた。

祭壇にある感圧版を踏むと、いつの間にか手元にあったりんごの代わりに赤いポピーが手に入る。

何秒かすると、スタート地点へ帰ってきた。
おんりー
おんりー
待って…これ…
砂の落ちる洞窟。

手渡した赤いりんご。

のんびり食料調達をした村。

ホグリンに襲われた赤森。

一緒に落ちて耐火ポーションを共有したマグマ。

一緒に倒したエンドラ。

最後に手渡した赤いポピー…。



あなたさんとエンドラ討伐を目指した時の全ての記憶が蘇り、慌てて制作者の名前を確認した。

そこには二つの名前がある。

一人は時折パルクールマップを作っている人なので分かったが、もう一つの名前は初めて見た。



"足に矢を受けたポテト"
おんりー
おんりー
は…っ笑
意味が分からなかった。

意味が分からないのに、意味が分かってしまって少し笑ってしまった。


いつからポテトになったんだ君は。

木の器にブレイズロッドを乗せたことがそんなに印象的だったのだろうか。

今更ながら少し恥ずかしくなる。
おんりー
おんりー
ちゃんと見つけたよ
おんりーは、さっき開いたおらふくんとのメッセージ画面を開いた。
おんりー
おんりー
"ごめん、やっぱり聞いてほしいことある"

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