ー高専ー
そう、そのスーパー前で
めっちゃ怒られて、置いていかれた。
おやつの買いすぎで。
悠仁に見られてたなんて…迂闊だったな…クソッ
傑さんの離反のあとも、五条さんは私にずっと
普通に接してくれた。
それが私の気持ちをラクにしてくれた。
私以上に苦しかった筈なのに。
私がこっそり泣いていた後、知らないフリして
しれーっとおやつ持って遊びに来たり
そういう一つ一つが、ピュアな男の子みたいで、
何かに縛られていた心が、解かれた。
力関係では、当然雲の上の人だけど、
傑さんが居なくなって間もなく、夕方の教室で
五条さんが1人黄昏れていた横顔が忘れられなくて
そこには、最強呪術師の姿はなく
親友に置いていかれ、ひとり孤独になった
普通の高校生がいた。
大切な人を失った痛みがわかる分
いつしか私が支えられたらという気持ちになっていた。
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ー電話ー
久しぶりに悟に会える。
私の誕生日をお祝いしてくれるなんて
嬉しくて、楽しみでしかなかった。
10月29日 私の誕生日前日
私は軽食の用意をし、彼を待っていた。
帰ってきそうな時間になっても連絡はない。
いつ帰ってくるのか、ずっとドキドキしてた。
プルル
彼から来たメール。
やっぱりか…
何とも言えない寂しさが込み上げてくる
ちょっとだけ、楽しい時間を期待した私。
悟の家で、悟の私物に囲まれたこのリビングにいるのに
彼本人だけいない。
今日も会えなかったね。
涙が溢れてくる。
近くなるほど、彼との距離を感じてしまう。
前まで何とも思ってなかったのにな・・・
傑さんがいなくなった時の感覚が蘇る。
彼が戻ってくるまで、私はそこに佇んで
彼が戻ってきても普通でいられるように、堪えていた。
ちゃんと繋がってる筈なのに。
頭では理解しているのに、気持ちが反比例する。
挫けそうになる。
自分用に買った小さなシャンパンを飲む。
シュワシュワした泡を見ていると泣けてきた。
会えないから?
満たされないから?
不安だから?
寂しいから?
私、強いはずなのに。ね。
日付けが変わり、ホントの私の誕生日になった頃
泣き疲れて、彼の寝室で眠りについた。
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ー任務後ー
これ任務内容と違うよな~
想像以上の呪霊数、強さが増していったし…
誰かが誘導してる?呪詛師の仕業か?
にしても、目的がイマイチ分からない。
でも
標的が僕なのは間違いなさそうだね。
「これから向かうよ」って…遅いよな、時間。
メール送るのやめとこ。
アイツのことだから、帰ったかも知れない。
でももしかしたら居るかも知れない。怒ってるかな。
逸る気持ちを抑えていたけど、
外から部屋を見る。電気が消えてるか…
あなた、帰ったかもしれないね。
ー寝室ーカチャ
玄関に彼女の靴があってホッとした。
待っててくれて、ありがとな。
泣いたような顔してさ。
寂しかったよな。
僕はね、そこに居てくれるだけで
嬉しかったんだ。
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ー玄関ー
10月30日 私が生まれた日
今日、悟は休日出勤となる予定だったが
溜まっていた仕事を終わらせ、早々に帰宅してくれた。
きっと予定を組み替えてくれたのかも知れない。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。