第52話

プレゼント
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2020/05/26 10:06


私は矢野くんを見送ったあと、すぐに莉子ちゃんにLINEをした。



きっと矢野くんが素直になっても、莉子ちゃんが私に気を使ってしまいそうだから。






✉莉子ちゃん、お誕生日おめでとう!突然だけど、私からプレゼントを贈ります。私は莉子ちゃんのことが大好きだよ。だから、幸せになって欲しい。私に遠慮なんてしないでね。素直にならなきゃ絶対許さないからね!!また一緒に遊ぼう。素敵な誕生日を過ごしてね✨






送信、と






私「………ふぅ…」






あぁ、終わったんだなぁ…と妙に実感が湧いてきた






私「…………帰ろ…」





本当なら幸せに過ごしたはずのクリスマスイブ。





結局ひとりぼっちになっちゃった





自分で選んだ答えなのに、街から聴こえてくるクリスマスソングが今はツラい





ケーキでも買って帰ろうかな、、笑






私は見栄を張って4号のクリスマスケーキを買った。






ひとりで食べ切れるはずもないのに。







私「ただいまー」






なんて、誰もいないのに。






しーちゃんには別れたこと伝えないとなぁ…


明日連絡すればいいか




私はホールケーキを切り、テレビをつけた





『〇〇のイルミネーションを見に、たくさんのカップルが訪れています!』


ーーーピッ


『これから〇〇ホテルのディナーに行くんです〜』


ーーーピッ


『きっと君はこない、一人きりのクリスマスイブ♪』






見事にクリスマス一色に染まったテレビ



ははは、



一人きりのクリスマスイブか、、



私にピッタリの歌じゃん、、




ーーーーーピッ




もうテレビ消しとこう…







私「…………ケーキはおいしいのになぁ…」








ーーーーーーーピンポーン












誰だろ?








私「はい」





モニターを見るとそこには帽子を深く被った人が
映っていた






『宅配便でーす』



私「あ、はーい」






宅配?


お父さんかお母さんが何か頼んだのかな…







ーーーーーーーガチャ








私「………あれ?」





そこに宅配の人の姿はなく、、




なにこれ、、




え、ホラー?





私は怖くなり、急いで扉を閉めようとした






その時







コタ『帽子深く被った奴なんて怪しいだろ、アホ』






私「え!?コタ!?」







扉を開けて玄関先の塀の陰を見に行くと、

コタが座っていた







私「何してんの?」



コタ『ん?宅配便つったろ』



私「バイト始めたの?」



コタ『は?始めてねーよ(苦笑)』



私「え?だって宅配便って…」



コタ『いいからお前ん家入れろ』



私「いいけど…」






リビングまでコタがズカズカ入っていくと

急に足を止めた。






コタ『お前、、ホールケーキ買ったの?』


私「………悪い?」


コタ『いや、、』





次第にコタの肩がプルプルと震え出した





私「………笑いたきゃ笑えば?」



コタ『うん、ちょっとまじもう無理(爆笑)』






この男、本当に腹抱えて笑い始めたよ


人が寂しい思いしながら買ったのにさ(怒)






コタ『あーーーー笑ったら腹減った!俺にもこのケーキ食わせろ』



私「はぁ!?まじ何しに来たの?」



コタ『七瀬、皿とフォーク!』



私「………もう(怒)」






そしてコタの分を切り分けて私も再び食べ始めた






私「あ、テレビつける?」


コタ『いいよ、今日面白いテレビやってねーし』


私「まぁ、たしかに…」






今日の朝にコタには矢野くんと別れるつもりだって伝えたけど…


ちゃんと言わなきゃだよね…


色々と相談に乗ってもらってたし







私「………コタ、あのさ…」



コタ『……んー?』



私「………あの…」



コタ『…………』






やば、、泣きそう、、






コタ『………もう一切れ食っていい?』


私「え!?あ、うん…」


コタ『お前さ、一人で4号のホールケーキ食うつもりだったの?笑』


私「……何も考えてなかったけど…」


コタ『そういう時は都合のいい隣人に持ってくれば良いんだよ、ばーか』


私「…………そうだね、たしかに(苦笑)」






コタはきっと分かってるんだろう


別れたことも、私がなかなか切り出せないのも。





しばらくしてコタがケーキを食べ終えた。






コタ『ご馳走様でした!このケーキ美味かったな!』




そう言い、大の字になり寝転がるコタ。





私「すごい…あと二切れになった…」



コタ『あとは七瀬の母ちゃんと父ちゃんにあげろよ』



私「あ、うん…」






コタってほんとそういうところ気が利くよね…




私と違って。



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