友達がいないのが当たり前の日常になり始め、その頃は一言も喋らなくなっていた。
そんな時に時透無一郎、有一郎に出会った。
最初に話しかけられた時、私は無視した。
人を信じた方が負けだと思ってたから。
それに私の友達になったら可哀想だと思ったから。
それでもウザいくらい二人は話しかけてきた。二人はその時、一度も笑わなかった。
最初は本当に迷惑だし、二人のことが大っ嫌いだった。
でもある日、つい、何?って話しちゃって、そしたら急に二人がニコッって笑ったの。
久しぶりに私に向けられた笑顔を見て、つい言っちゃったの。
あなた達は信じても良いの?って。
二人はびっくりしてたけど直ぐに頷いてくれて、その日初めて、本当の友達"真友"、信じれる友達"信友"に出会うことができたんだ。
その日から私はよく笑うようになったと思う。
学校に行ったら二人がいて、一人で行動することが無くなった。
相変わらず勉強は出来なかったから、両親や兄からは悪口を言われ続けていたけど、
そんなこともどうでも良いと思えるくらい楽しくて充実した日々だった。
ある日、時透家に遊びに行った時、夕ご飯を食べさせてもらった。
無一郎のお母さんがハンバーグを作ってくれて、
これまでも、ハンバーグは食べたことがあったけど、
お母さんは料理なんて作ってくれるはずもなくって、いつもコックさんが作る料理ばかりだった。
だからかな。お母さんの味っていう感じがして、涙が零れそうになったんだ。
無一郎のお母さんもお父さんも無一郎達にいつも優しく微笑んでて、本当に無一郎達のことを愛してるんだなって伝わってきて、とても羨ましかった。
その日から、私は無一郎の家にほとんど毎日、遊びに行った。
家に帰っても帰らなくても何も言われないし、家では、私は空気のようなものだったから。
無一郎のお母さん達は親さんが心配しない?大丈夫?って最初の方は言ってたんだけど、私が帰りたくないって言い続けてたら、何か察してくれて、何も言わなくなった。
無一郎のお母さん達は私のことを我が子のように大事にしてくれて、たくさんの愛を与えてくれた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!