先輩に起こされること自体レアなのに、存じ上げない部屋にいるんですけど。誘拐?何?は?
なんで先輩と話しながら、物色していく。
はあ、全く…先輩はドキドキ(ある意味)させるのが得意なんだから。
そう会話を交わし、「これ、ほんとにまずいやつだ。」そう感じる。
いつも通りを装っているけど、ぶっちゃけキツイ。
唯一無二の家族を失う可能性があるのに、なんでヘラヘラしなきゃいけないのか。
怖い。怖くてたまらない。
そんな俺を隠すために平然を装って、恐怖という気持ちを飲み込もうとする。
…はは。銃口って、自分で向けても意外と怖ぇや。マンガとかで自害するやつとかいるけど、こんな怖いことなんて、知らなかった。
そう呑気に考えてた。
これ、ダメなやつだ。
そう思った。
先輩は、思いっきり俺を蹴飛ばした。
上手く、立てない。
蹴りを入れられたところが痛くて堪らなくて、先輩に近づきたいのに、近づけない。
まるでスローモーションだ。
目の前には、大量に血を流す千景さんがいて。
こんな俺が見ても、「助からない」とわかるほどの出血量だった。
でも、諦めたくなかった。
蹴られた部分も、蹴り飛ばされた時にぶつけた足も、何もかもが痛い。動けないほどに痛い。
でも、千景さんは_もっと痛い。
何が、「MANKAIカンパニーをよろしく頼む」だよ。こんな俺が、できるわけないだろ。
ふざけるな、1人でも欠けたら、ダメなんだ…嫌なんだよ、やめろよ。
ふざけるな。
「地獄行き」?そんなの、今千景さんを見殺しにした俺だってそうだろうが。
幸せが崩れるのは一瞬。…そうだよ、そうなんだよ。
じくじくと痛む体に、ガチャリと音を立て開く扉。
ああ、千景さんは死んだんだ。
そして、俺は_
__死亡者、3名
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。