これまで一番練習してきた曲。
高音との切り替えをチマチマとしないと。
みんなの呼吸も整う。
あ、
緊張抜けてる。
三鷹くんの言う通りだな。
もう楽しもう、精一杯、
今までやった全てを
ぶつけるくらいに!
他の曲はドラムとかが先導して曲が始まるが、
この曲は私の声で始まる。
そして、最初は私の声だけ。
段々と、暗くなる。
すぅっと息を吸い、
そして、みんなが入ってくる。
そんなアンコールも
終わってしまう。
『ヒバナ』はもう一度アンコールされなかったし、あんまり練習できていないけど。
息を揃え全員で礼をする。
スッと手首に着けたゴムバンドを皆に見せると
(舞台裏なう)
辺りが暗くなった後、芹川くんは戻ってくる。
そして、明るくなり観客は騒ぎ始める。
どうやらグッズを買う人でごった返しのようだ。
ウンウンと頷く芹川くん。
あ、あれ?
何か緊張が解けたら。
パタッ
思わず座り込んでしまった。
まったく、碧未くんは優しい。
碧未くんが手を差し伸べてくれて立ち上がる。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!