ほら、一言多かったり、
足りなかったりすることあるし?
会話とか続かなさそうだし、
まぁうちのクラスの男子は気にしないだろうけどさ。
なんとなく癪に障ったので蹴った。
いや、加減はしましたよ。
先程シュークリームと一緒に買った、
麦茶を飲みつつ横目で翔を見た。
格好は上は白のTシャツ、それから下は半ジャージに、
上のジャージを腰に巻いていた。
私は普通に上下ジャージですが。
下は長ジャーですよ。
普通に秋だし、風は吹く度に耳が冷たくなる。
通り過ぎようと思ってたけど、
甘い香りが鼻に付いて、振り返ってしまった。
翔は私の提案を親指を立てて返してくれた。
相変わらずの眩しい笑顔で。
あれ、何か暑い。
やっぱ、ジャージ脱ぐべきだ。
うん。そうしよう。
と、わざわざ脱ごうとする前に、
時間の無駄だとでも言わんばかりに行ってくれた。
私は人の通りを避けつつ上ジャーを脱ぎ、腰に巻く。
翔の忠告をも前に、カステラに釣られてしまう。
『トンッ』
肩がぶつかったのは、若い男の人で。
背は…どうだろ、大和よりは高いかな。
うん、また顔が整ってるし…。
でも優しそうだから、良かった。
まるでその場から遠ざけようとでもするかのように引っ張られ、
カステラを抱えつつ早歩きになる。
まぁでもいっか。
おぉ、中も凄い賑わい。
あ、中と言うのは校舎の事。
色んな宣伝の声や、音楽が聞こえてくる。
それから私と翔は、お腹の限界まで食べ歩いた。
さて、まだまだあなたのモテ期は始まったばかり。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。