莉犬side
『桃田 里美……ねぇ……』
誰もいない廊下を歩きながら、俺は、生徒の名前が書いてある名簿を見て、
1人の男子生徒の名前に目をとめた。
『この人が、俺を可愛いって言ってたのか……』
体育館で行われた新任教師による挨拶で、
緊張しすぎた俺を、可愛いって……馬鹿にしてるだろ……
『俺のどこが可愛いのやら…』
小さく誰にも聞こえないようにそう言う。
ドンッ
『あ、ごめんなさいっ!』
考え事をしながら、歩いていた俺は、前を見ずに歩いていたため、
ぶつかってしまった。
?『大丈夫ですか……?』
ぶつかった人が、俺に手を差し出す。
『あ……はいっ……/////』
綺麗な顔のその人は、俺に顔を近づけているから
俺の顔はどんどん赤みを増していく。
?『赤城……莉犬先生ですよね?』
『……俺の名前、知っているんですか?』
新任の俺でも名前覚えてくれるんだ……嬉しいなぁ……
?『俺、先生の生徒ですから』
……え?
『……じゃあ、君の名前は?』
里美『俺の名前は、桃田 里美です。』
……は?
この人が?
俺を……可愛いって?
『う、嘘……』
もっと、チャラいかと思ってた……
こんな人が言うなら、可愛いって、本当……って、そんな訳……ない
里美『こんなに可愛い先生だと、とても嬉しいです……』
『……か、可愛いくなんか……/////』
里美『そういうところですよ……』
チュ
『……ん?』
お、俺……今……
『ん゛ん゛ぅ…………!?』
な、なんで……
数秒後、柔らかい唇は、俺の唇から離れた。
里美『……っ……可愛いなぁ……』
『……っ……/////』
お、俺の……ファーストキスがぁ……
『つ、次したら……た、退学だからぁ……/////!!』
俺は、涙目になりながら走ってその場を去った。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。