第17話

愛されなかった
163
2023/04/01 08:04
(なまえ)
あなた
消…エル…?
なんで…どうして…?
よりによって、今…?
久しぶりに楽しかったのに…。
みんなに教えてもらって勇気が出たのに…。
神様、それはひどいよ。
マスター
マスター
あなた!!
(なまえ)
あなた
ま…ス、たー…。
ところどころに雑音が入ってる。
観客
演出…?
観客
だったらだいぶ凝ってるけど…。
(なまえ)
あなた
チ…がう…。
リン
リン
あなたのニックネーム!!
レン
レン
足が…!
あし…?
私は足元に目線を置く。
すると足がまるでバグったかのように崩れていた。
(なまえ)
あなた
あ…アれ…?
その崩壊はどんどん上へ登ってくる。
嫌だ…嫌だ…。
誰かの声
お前はもう終わりだ。
(なまえ)
あなた
エっ…。
脳内から誰かの声が聞こえてきた。
もう終わり…。
誰かの声
誰からも愛されなかった。
(なまえ)
あなた
そ、ソんナ…。
誰かの声
愛されないボーカロイドなんかいらない。
誰かの声
削除する。
(なまえ)
あなた
さく…ジ…ょ…。
気がつけば足が無くなり、
立つことができなくなっていた。
もう終わりなんだ…。
自然と涙が頬を伝った。
マスター
マスター
あなた!あなた!!
(なまえ)
あなた
ま、スた…。
(なまえ)
あなた
今、まデ…あ…りが…トウ…。
ここまでやってこれたのは、
マスターの優しさのおかげ。
みんながくれた希望のおかげ。
でも、足りなかったのかな。
私は愛されていたはずなのに。
みんなに愛されていても、
使われなかったらダメなのかな。
ミクみたいにみんなに使われてないもんね。
私の曲なんて売れるわけないもんね。
こんな声だもん。
無気力で、薄いし…。
だから、しょうがない。
逆に、消えた方が正解なんだ。
そう、これでよかった。
誰かの声
諦めたか。
誰かの声
それでいい。
気がつけば、体の半分がなくなっていた。
握りしめたマイクを見つめる。
「あなた」
私の名前が彫られている。
濃い緑に黄色の薄いグラデーション。
綺麗。
私専用のマイクなんだ。
そう思うと、少し悲しくなった。
もう、歌えないんだ。
リン
リン
…!
ウナ
ウナ
……!!
みんなが何か言ってる。
もう耳が聞こえないや。
誰かの声
マイクを離せ。
誰かの声
もう歌わなくていい。
誰かの声
音楽に縛られなくていい。
誰かの声
最高だろ?
もう嫌なことを言われなくていい。
悲しまなくていい。
最高かもしれない。
(なまえ)
あなた
で…モ……。
みんなと話せなくなるのは、少しだけ、
いや、結構、
すごく、とても…
寂しい。
(なまえ)
あなた
ワ…たシ…もッ、と…歌…イタ…ぃ…。
(なまえ)
あなた
歌いたい!

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