なんで…どうして…?
よりによって、今…?
久しぶりに楽しかったのに…。
みんなに教えてもらって勇気が出たのに…。
神様、それはひどいよ。
ところどころに雑音が入ってる。
あし…?
私は足元に目線を置く。
すると足がまるでバグったかのように崩れていた。
その崩壊はどんどん上へ登ってくる。
嫌だ…嫌だ…。
脳内から誰かの声が聞こえてきた。
もう終わり…。
気がつけば足が無くなり、
立つことができなくなっていた。
もう終わりなんだ…。
自然と涙が頬を伝った。
ここまでやってこれたのは、
マスターの優しさのおかげ。
みんながくれた希望のおかげ。
でも、足りなかったのかな。
私は愛されていたはずなのに。
みんなに愛されていても、
使われなかったらダメなのかな。
ミクみたいにみんなに使われてないもんね。
私の曲なんて売れるわけないもんね。
こんな声だもん。
無気力で、薄いし…。
だから、しょうがない。
逆に、消えた方が正解なんだ。
そう、これでよかった。
気がつけば、体の半分がなくなっていた。
握りしめたマイクを見つめる。
「あなた」
私の名前が彫られている。
濃い緑に黄色の薄いグラデーション。
綺麗。
私専用のマイクなんだ。
そう思うと、少し悲しくなった。
もう、歌えないんだ。
みんなが何か言ってる。
もう耳が聞こえないや。
もう嫌なことを言われなくていい。
悲しまなくていい。
最高かもしれない。
みんなと話せなくなるのは、少しだけ、
いや、結構、
すごく、とても…
寂しい。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。