〜るぅと視点〜
ころちゃんに呼ばれて、急いで莉犬の元に駆けつけた。
莉犬はなーくんの腕にもたれ掛かって、ぐったりしていた。
さとみくんは最年長なりの冷静さを見せて、なーくんと莉犬の傍に座った。
莉犬の顔を覗き込んでから、少しため息をついた。
僕はさとみくんが病院に行かせない理由に閃いた。
…いや、閃いたというより察してしまった。
僕はころちゃんとジェルくんにそれを説明した。
さとみくんはただスタッフさん達に説明して、運動会を中断してもらうようにお願いしていた。
なーくんは暗くなりかけていた場の空気を取り戻してくれた。
それから僕達は濡れたタオルを持ってきたり、コンビニまで食べられそうなものを買いに行ったり…と分担して看病に努めた。
スタッフさん達となーくんの会話を聞くに、莉犬は熱中症の可能性が高いらしい。
皆でうちわを持ってひたすら扇いだ。
そして一時間後…
莉犬は困惑した様子だった。
倒れる前の記憶は残っていないらしい。
ただ「何か寒かったから起きた」と言って、皆を安心させた。
そして、他のメンバーの体調も気遣って、今日は早めに帰ることになった。
僕はなーくんと共にスタッフさん達の片付けの手伝いをした。
なーくんは大きな荷物を軽々持ち上げて、スタッフさん達の方へ持っていった。
僕はそんななーくんを見て、少し心が痛んだ。
目の下のクマ…ちゃんと食べているのか心配になる細い体…、何よりなーくんの口から「辛い」とか「疲れた」とか弱音を聞いたことがない。
ずっと我慢してるんじゃないかな。
僕達に心配させないように…。
そうやってぼーっとしていると、なーくんが戻ってきて肩を叩かれた。
そうして僕は最後まで片付けを手伝って、帰路に着いた。
end
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。