第9話

ねえ
3,835
2019/04/12 16:50

🐰

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__意識は ある。



でも 身体を起こせない。動かない。

目が開かない。



「じんたん!!!じんたん!!!!」



俺の名前を必死で呼ぶ
テオくんの声が聞こえる。




__あー、テオくん困ってるなあ。
また困らせちゃったなあ。
テオくんこういうの苦手なのに...

...電話してる。救急車かな。
俺 今から運ばれるのかな

このまま死ぬのもいいけどなあ。




朦朧としていく意識の中で
呑気にそんなことを考えていたら
テオくんの大きな声と周りのざわつきが
だんだん遠ざかって行った。








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_____








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重たい瞼をゆっくり持ち上げると
明るい照明と
真っ白な壁があった。





規則正しい心拍数の音と
自分の呼吸を感じる。





__病院だ。そりゃそうか





倒れたときのことはちゃんと覚えていた。
自分でも驚く程落ち着いてて、
ゆっくり辺りを見回した。


「...あれ、」


掠れた力ない声を絞り出す


俺の微かな声と同時に
病室のベッドの側で泣いているテオくんが
勢いよく顔をあげた


「......じんたんッッ...!!」


ぼろぼろ涙を流すテオくんが
俺の手をぎゅっと握った。



じ「...テオくん 泣いてるの?」


こんな状況でも 手を握られたことに心が揺れて、力なく握り返す


テ「っ...そりゃ泣くよ...!」


俺の手をしっかり握ったまま
テオくんが先生を呼んで、
今日は入院することになった。


倒れた原因は 過度な栄養不足に睡眠不足
過労 ストレスによるものだった。


ここ数ヶ月
お腹がすいたような気がしても ものを食べれば気持ち悪くなって吐き戻して
水分も テオくんが一緒に居るとき以外はほとんど口にしなかった。

何故かろくに眠れず
日に日に疲れを感じて

体は悲鳴をあげていた。



病院の先生から一通りの質問と診察をされて またベッドに戻る。
テオくんはずっと付き添ってくれている。

ベッドに腰掛けた瞬間
テオくんが少し強く怒った


テ「なんで、俺に何も言わねえの?俺に相談しねえの?じんたん、なんでそんなになるまで抱え込んでんの...?っ」

テオくんの瞳から また涙が溢れる。



点滴の刺さった自分の腕に視線を落として

作り笑いしてしまいそうな自分に嫌気がさす。


__テオくんに 迷惑をかけたくなかった。
テオくんに 嫌われたくなかった。

好きだと知られてしまってから いつも通りに振る舞ってみても、あの夜俺の告白を聞いたときの テオくんの表情が頭から離れなくて
あの どうしようもなく困った顔が 俺に現実を叩き付けてくるようで

軽蔑されてしまう。
気持ち悪いと思われてしまう。

...それだけは 避けないと。


そればかりが心を占めた。
それほどに これほどに
俺はテオくんのことが 大好きだった。


一緒に居るとやっぱりどきどきしてしまうのも、毎日かっこいいテオくんが俺に笑いかけてくれるのも、段々と心苦しさを感じてしまって いつだって泣き出したかったんだ。




じ「...テオくん」



ちゃんと話して



じ「俺さ、」




俺も楽にならないと





じ「テオくんと一緒に暮らすの。やっぱり無理だよ」

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