第52話

ハーブティーには優しさを
14,418
2019/10/28 21:10
知らないうちに足が動いて向かっていた場所

息を切らしながら、立ち止まって顔をあげる


健人くんの家


なぜか無性に健人くんがいいと思った

なんで私はこの時、健人くんを選んだんだろう?

健人くんなら慰めてくれるからだろうか

健人くんなら女の子扱いしてくれるからだろうか

そんなことどうでもいいや


ピンポーン


間抜けな音が暗闇に響く

健人)はーい
あなた)健人くん…
















































健人)あなた?!
あなた)うん、きちゃった…
健人)今、開けるから!

なんて慌てて、玄関まできてくれる

ほんとに心配してくれてるんだって思うと、それだけで泣きそうになる

健人)あなた大丈夫?!
あなた)うん、大丈夫…

「嘘でしょ?」みたいな表情で私を見ながら、ぎゅ〜っと抱きしめてくれる

さっきの風磨との思い出が蘇ってまた泣きそうになった

健人)ん、体冷たい、入って?

健人くんがリビングまで案内してくれる

健人)ほら、ソファ座って?そこにある毛布でくるまって?
あなた)ありがと…
健人)体があったかくなるハーブティー入れるから待ってね?

優しい笑顔で私に言う健人くん

迷惑かけてるんだろうな

なんて思うけど

「あなたのことで迷惑とか思ったことないよ?」

って前も言われたっけ

言うのはまた、今度にしよ

健人)ん、どうぞ

私の前に出されたハーブティーは落ち着く匂いで、体の芯からあったまった

体も心もあったかくなって、なぜか涙が私の頬を伝う

健人)あなた…
あなた)あ、なんでも、ないの…
健人)よく、頑張ったね、あなた

やだ、そんな優しい言葉かけないで

もっと涙でちゃうよ

健人)ん、泣いていいよ

なんて手を広げて、「おいで?」みたいな顔で私を見る健人くん

私は健人くんの胸に気づいたら飛び込んで、泣きじゃくった













































んっ…

ここ…

あ、昨日健人くんの家に来て

そのまま寝ちゃった?

健人)あ、あなたおはよ

横で雑誌を読んでる健人くん

健人)あなた、昨日泣き疲れて寝ちゃったからさ?
あなた)えっと、ごめん
健人)ううん、謝んないで?あ、変なことしてないから、ね?

優しいなぁ、健人くん

健人くんの彼氏になったら、こんな不安なくなるんだろうか

なんて嫌な考えが頭によぎった

健人)あなた、昨日お風呂入らずに寝ちゃったから入っといで?
あなた)うん、ありがとう
























それから、お風呂入って、ご飯も食べさせてもらった

さすがにこれ以上いるのは迷惑だ

健人)ほんとに大丈夫?
あなた)うん、色々ありがとう、ごめんね
健人)ん〜ん、だから謝んないでって言ってるでしょ〜

なんて優しい声で、私の頭をくしゃくしゃと撫でる

健人)無理しないでね?辛くなったらいつでも来ていいし、連絡してね
あなた)ありがとう

ほんとに、健人くんは優しすぎるんだ















































健人side



10時を少し回った頃

ピンポーン

無機質な音が室内に響く

こんな時間に誰だ?

少し不安になりながらも、見ていたテレビを消してインターホンを見る

ん、女の人?

健人)はーい
あなた)健人くん…












































健人)あなた?!
あなた)うん、きちゃった…
健人)今、開けるから!

あなただとわかった俺は、急いで玄関に向かう

健人)あなた大丈夫?!
あなた)うん、大丈夫…

こんな時間に1人で

しかも、目も赤い

大丈夫なわけないのに

ほんとに、このお姫様は甘えるのが下手だ

たまらなくなって、ぎゅ〜っとあなたを抱きしめる

体が冷たい

こんなんじゃ、風邪引いちゃうでしょ、あなた

健人)ん、体冷たい、入って?

こくんっ

と頷いたあなたは俺の後をついてくる

ほんとはお風呂に入らせた方がいいだろうけど、今のあなたにそんな体力も精神力もあるようには見えなかった

とりあえず、体を温めた方がいいよね

健人)ほら、ソファ座って?ここにある毛布でくるまって?
あなた)ありがと…

心も体も温かくなるかハーブティーを入れてあげよう

健人)体があったかくなるハーブティー入れるから待ってね?

そう言って、台所に向かう

ハーブティーをいれてる間、俺は色々考えた

なんでこんな時間に1人なんだ?

そもそも、なんで俺の家にくる?

聞きたいことはいっぱいあるけど、聞いたらあなたは困惑するだろう

俺の所に来てくれただけ嬉しい

俺があなたにとって落ち着く場所になればいいのかもしれない

健人)ん、どうぞ

ハーブティーを飲むあなたを見つめる

かわいいなぁ

なんて見つめてたら

ほらね、ハーブティーには魔法があるんだ

なぜか、辛いことがある時にこれを飲むと素直になれるんだよ

この方が、あなたは泣きやすいでしょ?

健人)あなた…
あなた)あ、なんでも、ないの

なんでもないわけないでしょ

バカっ…

健人)よく、頑張ったね、あなた

このお姫様は素直になれない

もっともっと、俺を頼ってよ

健人)ん、泣いていいよ

なんて言って、手を広げる

あなたの全部受け止めるから

あなたの目に涙が溢れて止まらなくなりそうな頃、俺の胸の中で魔法がとけた





































泣き疲れて俺の胸の中で寝ちゃったあなた

なにもきいてないけど、どのくらいの時間泣いていたんだろう

健人)お姫様、ベットに運びますよ

なんて小声で話しかけて、寝室に向かう

ベットに寝かせて、布団を被せる

あなたの寝顔を見ながら、色々な考えが頭に浮かぶ

理由はだいたいわかる気がするな

あなた、もう俺の所くればいのに

俺なら泣かせたりしないのに

なぜか、あなたの姿を見ながら泣きそうになった




























あなたより少し早く起きた、俺

ベットで一緒に寝ちゃった

それぐらい許してね?

あなたが起きるの待とう

雑誌を読んでると、もぞもぞと動く

健人)あ、あなたおはよ

寝ぼけてる顔もかわいい

健人)あなた、昨日泣き疲れて寝ちゃったからさ?
あなた)えっと、ごめん

なんで謝るの

健人)ううん、謝んないで?あ、変なことしてないから、ね?

そう、ほんとに変なことはしてないよ?

もちろん、キスしたくなっちゃったけど

あなたを困らせたりはしないよ

あー、俺って優しい

健人)あなた、昨日お風呂入らずに寝ちゃったから入っといで?
あなた)ありがとう

なんて言って、お風呂を促す


昨日、開ける余裕がなかったスマホ

見ると、菊池から4件のLINEと3件の着信



風磨)中島
風磨)あなたきてない?
風磨)なんか知ってたら教えてくれ
風磨)中島からあなたにLINEしてあげて

はぁ、バカだなこいつ

泣かせるなよ

健人)ごめん、昨日見れてなくて、あなたなら大丈夫だから安心しろ

すぐに既読がつく

風磨)ほんと、ごめん
健人)いいから、今日帰ると思う
風磨)ありがとう



なんて菊池とやり取りをしてると

お風呂から上がってきたあなた

ご飯も済ませると、あなたはこれ以上いるのは悪いからと俺の家からお暇するらしい

俺は、ずっといてくれてもいいけど

なんてでかけた声はギリギリで止めた

健人)ほんとに大丈夫?
あなた)うん、色々ありがとう、ごめんね

申し訳なさそうな顔をするあなた

健人)ん〜ん、だから謝んないでって、言ってるでしょ〜

なんて言って、あなたの頭をくしゃくしゃと撫でる

健人)無理しないでね?辛くなったらいつでも来ていいし、連絡してね

なんて言っても、無理するだろうけど

少しでも、俺という存在があなたにとって安らげる場所だったらいいな

あなた)ありがとう

なんて優しい顔で笑うあなた

ほんとはこのままあなたを俺のモノにしたい

なんて思う俺は悪いやつだ

多分、あなたが思ってるほど優しくない

プリ小説オーディオドラマ