うんと背伸びをして目を覚ました。ベッドから降りようと足を降ろすと、なにかに当たった。几帳面な性格だから足元に物を置くことはない…はず。俺はゆっくり顔を上に向けた。
『…は、』
「おはよう、貴久くん」
そこにいたのは、俺の大好きな、夢の中だけに現れるインキュバス。…何故?ここは夢の中なのか?
「びっくりしてるよね(笑)私、貴久くんに会いに来ちゃった」
『現実に…?』
「インキュバスは夢と現実の行き来が出来るの。ルシファーに頼めばね」
『それで現実に…って、ダメだろ、そんな格好で外歩いたら襲われるぞ』
「それで前回失敗してるんだけどね」
自嘲の笑みを見せた。
今日は休み、外に出ずに彼女といることは可能だ。俺は彼女に今日一日だけの自宅の滞在を許可した。
まずはベッドから降りて水を飲んだ。彼女はベッドに座っている。何を待っているかはなんとなく予想が付いていた。
『お前、ここでも精液飲まないとダメなの?』
「うん。ルシファーの言いつけ」
『じゃあ風呂入ってくるから、待ってて』
「わかった!」
お湯は沸かさずに、隅々までシャワーで流して、出来るだけ短い時間でお風呂から上がった。
自分でもびっくりだった。女嫌い(性行為というものが好きじゃない)の自分が、まさか悪魔に恋をするなんて。今は彼女に尽くしてやりたいとまで思っている。
どうせすぐに脱ぐだろうと思いハーフパンツと白いTシャツで寝室に戻った。
「遅い」
『お前のためだって』
「はーやーく」
『わかったよ、ほら』
俺はベッドに腰掛け、彼女の方を向いて手を広げた。彼女は嬉しそうに俺に抱きついた。
彼女の頭に付いている小さな角が丁度目の前にあったから、試しにぺろりと舐めてみると彼女の腰が跳ね上がった。
「ちょ、急に舐めないでよ…!」
『ここ感じるんだな』
「だーめ!全部私がするから、貴久くんは寝てるだけでいいの」
『それも言い付けか』
「そーだよ、ルシファーの言いつけは絶対だからね。いつでも見られてるんだから」
彼女は少し寂しそうな顔をした。
彼女は愛されているのだろうか。まあ、愛されていなくても俺が変わりにでもなんでもなってやる…けど。
「ごめんね、自分勝手で」
そう言って優しく押し倒される。俺は今日もされるがまま、無我夢中に貪った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。