今はお披露目式の儀式衣装の仮縫いをしています。プリマセーラ商会のマリアを筆頭とするわたくしの専属の針子たちが忙しく動きます。
商会の主であるマリアの指示に従いアンナという針子が丈を調節し始め、後ろではまた別の針子が飾りの位置を調整しています。
儀式用衣装はわたくしの髪の色である白銀をベースに薄いオーガンジーの青を重ねてフワッとした印象を与えるバルーンドレスです。とても綺麗に染められていて完成がとても楽しみなのです。
アンナが頷いたのを確認するとマリアとレティーシエラは隣の部屋へとわたくしの部屋を出ていきました。
仮縫いも終わり、針子たちが片付けを始めた頃に扉の前で護衛をしていたドロッセルの声が届きます。
ガチャリという音と衣擦れの音がしてフォニイお姉様が側近を連れて入って来られました。
その提案に驚きつつ、わたくしは顔が綻んでいくのを自覚します。
普通の貴族ならばあり得ないことですが嵐のように去っていったフォニイお姉様を見送り、わたくしは針子たちに向き直ります。いつのまにかマリアとレティーシエラも戻ってきておりました。
と、わたくしが出ないと針子たちも帰り支度ができないためそれだけ伝えて退出しました。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!