付き合ってません!
学生設定
やっっと終わった……
動かしていたシャーペンを持っている右手を止め、帰る用意をする。
テキストやノートを鞄に詰めているとトントン、と私の机を軽く叩く音がした。
顔を上げると、私の前の座席に座っている子が後ろ向きに座っていた。
国語の宿題ノート……というのは多分さっき前から回ってきた前回回収されたものだろう。
この子は確か……”ショッピ”と呼ばれていた気がする。
別の学校の生徒で背も幾分か、私より高い。
絶対家で開けろよ、と最後に念押しされ彼は鞄を背負って教室を出て行った。
帰宅後、中身が気になり急いで国語の宿題ノートを開けた。すると一枚の紙がひらりと落ちる。
拾って見てみると、そこには数字とアルファベットが沢山羅列していた。
紙を裏返してみるとラインのIDです、と淡々とした文で書かれていた。
恐る恐るアプリを立ち上げ、キーボードにIDを打ち込んでいく。
すると、猫のアイコンをしているアカウントがぽっと浮かび出た。
追加ボタンを押して電源を切った瞬間、ブブブッとスマホのバイブレーションが鳴った。
送り主は勿論彼からだった。
宜しくね、とそれだけ来たので宜しく、とそれとなく返しておいた。
それから学校はどこ?とかいつも何時に帰るん?とか色々聞かれた後にありがとうと感謝のメッセージが来て一旦会話は終了した。
次の日
靴箱から外靴を取り出して履いて校門へと向かう。
冗談を言い合っていると校門の柱に誰かが寄りかかっているのを見つけた。
その人はいきなりこちらを見ると小さく手を左右に振った。
とにかく私に用事があるみたいだったので彼に駆け寄る。
小走りしている途中にシャオちゃんに首根っこを掴まれてしまった様だ。
ショッピさんがクスクスと笑って手招きをしてくる。
そうすると、何故かシャオちゃんが私を手で制止してからずんずんとショッピさんの方へ歩いていった。
シャオちゃんが「さっ、帰ろー」と手を差し伸べたのでその手をそっと握ると反対の手からも温もりを感じた。
二人はバチバチとお互いを睨み合い、不穏な空気が流れる。
渋々だが受け入れてくれた二人は私を真ん中にして歩き出した。
ぼちぼち歩いているとシャオちゃんと行くつもりだったコンビニの前に差し掛かった。
20分の激闘の末、結局私のアイスはショッピさんとシャオちゃんの二人で割り勘というなんとも斬新な払い方に決定した。
シャオちゃんは口を軽く開けてアイス入れろ、と私に合図を送っている。
私はスプーンでアイスを掬って彼の口に運んだ。
この人ので減っちゃったでしょ?とパピコの蓋の部分だけを私に差し出した。
蓋の部分だけって……と思いながら有り難く頂く。
ショッピさんはフッ……と勝ち誇ったような笑みをし、シャオちゃんを散々馬鹿にしていた。
それから何故か私の家まで送って貰い、二人と別れた。
ぼそ、と独り言を呟いてベッドに身を投げる。
次の日もそのまた次の日もほぼ毎日3人で一緒に帰る事になるとはこのときはまだ知らなかった。
テスト……中間……やる気……出ないウッ……
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。