前の話
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☆0☆
自分の中にある本音。
それを、さらけ出すなんて…
簡単じゃないよ…
あの人 以外には。
☆1☆
あの人…
通学の、結構…満員の電車。
いつも3両目の一番まえのドアから乗り込む私。
いつも座ってる あの人を、
毎日 見ながら通学してる。
イヤホンで、なに聞いてるんだろう?
どんな本、読んでるんだろう?
何の勉強してるんだろう?
スマホでゲーム…してるのかな?
もう…1年間も、
毎日、あの人を見ている。
でも、気付かれない…
解ってる。
私なんて可愛くもないし…
あの人とは、釣り合わない。
だから、見てるだけ。
解ってる…
☆2☆
季節は秋。
今年も文化祭の準備が始まった。
私はクジ引きで当たりを引き、クラスの実行委員長になってしまった。
普通、ハズレだろ!
と、怒るキャラでもないから、
たぶん誰もが、面白くない私に期待はしていなかった。
「委員長〜今年は何やるのぉ〜?」
それを皆んなで決めるんでしょ!?
私に聞かれても…
〇「何かやりたい事 ありますか?」
一応、聞いてみる。
「俺、メイドカフェ!」
「いいねぇ〜!」
男子って…しょうもな…
「委員長って、趣味とかあんの?」
〇「えッ?私?!!!」
クラスの男子が、いきなり聞いてきた。
今は関係ないでしょ?!
バカなの?!
なんて、言えるはずも無く…
☆3☆
〇「………す…スイーツ…作り…」
「へぇ〜〜すごいじゃん!!!」
「ならさ!スイーツのメイドカフェにしようよ!」
って、何でか知らないけど、男女ともに話しが盛り上がり…
『ニャンニャン スイーツ メイドカフェ♡』
に決まった…
「委員長、メニュー考えてね〜」
「委員長、買い出しリスト作ってね〜」
「委員長、メイドの衣装、調達してね〜」
「委員長、飾りつけのレイアウト書いてね〜」
「委員長、看板作ってね〜」
なんでもかんでも、私に押し付け、
誰も責任を持たずにいる。
バカにしてるとしか、思えなかった。
よし!
だったら、やってやろうじゃないの!!!
お前ら全員、見返してやるよ!!!
私の戦いが始まった。
☆4☆
朝も早く、帰りも遅く、家でも、毎日毎日、可能な限り働いた。
文化祭 一週間前。
帰りのホームに降りると、
ホームのベンチに座って、本を読んでいる…
あの人だ…
なんで?
なんで こんな所に?
私が立ち止まっている隙に、電車は発車し、降りてきた人達は、階段へと消えて行った。
ドキドキが意味しているものが、
イマイチ 分からなかった。
だって…
あの人とは、釣り合わないって、
解かってるハズだから。
読んでいた本から、目線を外し…
ひとり ポツンとしてる私を見つけた。
見られてる!!!
ビックリした顔の私に、近寄って来る!
えっ?どうしよ!どうしよッ!!!
?「生きてたんか?」
初めて聞く声…
?「朝、見かけんくなったから、もう会えへんと思うて…良かった(笑)」
初めて見る笑顔…
何もかも、メッチャかっこいい〜〜♡
☆5☆
?「それ、重ないか?持ってやろか?」
〇「えっ!や、あの、結構です!」
?「ほな、座って話さへん?」
〇「え、えぇーーッ?!!!」
そりゃあ、ビックリするでしょぉ?!!!
だって、だって!あの人だよ!!!
なんで私なんかと話すの?
?「嫌なら ええわ。」
そう言って、ベンチへ戻って、また本を読み始めた。
来られるのも困るけど、来ないのも嫌なんだよな…
なんなんだ、この思いは…
私は迷いながらも、その人が座った椅子からふたつ開けて座った。
?「素直やないなぁ。」
〇「…それ …私…ですか?」
?「…あ〜俺か(笑)」
話しても顔を見る事が出来ない。
会話も続かない…
そのうち、知らない男の人が、間に座ってしまった。
なんでぇーッ!
最悪!
えっ!!!
うつむいていると、その人は私の隣に移動してきた。
と、隣にいる!!!
ヤ、ヤバイ!!!
ドキドキがスゴくて、ドキドキがぁーッ!!!
☆6☆
淳「俺、淳太。君は?」
〇「わ、私は、〇〇…」
淳「〇〇かぁ…覚えた。」
名前…呼んでくれた…
こんな日がくるなんてぇ〜〜♡
淳太くんかぁ…
覚えた(笑)
たぶん 私、一生忘れない!!!
淳「なんで、朝の電車 変えたん?」
〇「え、あ、は、早く行ってて…」
淳「何時?」
〇「さ、最近は 6:32の各停に乗ってます。」
〇「早っ!!!」
あ〜〜夢みた〜い♡
なんて、思っていたのも束の間。
淳「じゃな!〇〇!」
と、次に来た準急に乗ってしまった。
淳太くんが乗り込んだ電車を見送り…
〇「…じゃぁね…淳太くん…」
ひとりポツンと呟いた。
木枯らし…もう冬が近いな。
☆7☆
今朝は寒いなぁ〜
私は冬用のコートを羽織った。
一応…マフラーも持って行こう。
私は、6:32の各停に乗り遅れない様に、
家を出た。
6:30 重たい荷物を担いで、ホームへの階段を登った。
〇「ふぅ、間に合った〜」
ふと、ベンチを見る。
昨日の事を思い出した。
もう、あんな事は無いんだろうな…
カッコ良かったな。
淳太くん。
最後だったなら、もっと色んな事、聞いとけば良かったなぁ〜
いつも イヤホンで、何 聞いてるの?
いつも どんな本 読んでるの?
いつも 何の勉強してるの?
いつも スマホでゲーム…してるの?
もう聞けない…
夢の時間は、終わったんだ。
私は気持ちを切り替えた。
その出来事を、淡い想い出に決めて、
6:32。
来た電車の3両目に乗り込んだ。
☆8☆
空いているから、座れるのが嬉しい。
が、
淳「〇〇 おはよっ。」
向かい側の席から聞こえた声。
座れるからだけじゃ無かった!!!
てか!てか!
そんなのより、何百倍も何千倍も何万倍も嬉しくて…
私、ヤバイ!!!
淳「早いからさ、校門までおくるよ。」
〇「えっ!そんな悪いです!」
淳「俺、こんな早く学校 着いても、やる事ないやん(笑)」
そう鼻で笑って、私の荷物を持ってくれた。
や、優し〜〜ッ!!!
淳「寒いな。じゃな!」
〇「あ、待って!コレ…使ってください。」
淳「でも、〇〇のが…」
〇「私はもう、校舎に入るから…大丈夫///」
淳「お、おん…ありがと///」
淳太くんは、私の黄色いマフラーを巻いて戻って行った。
私より、ずっと似合ってる(笑)
その日から文化祭の前日まで、
同じ電車で校門まで荷物を持って、
送ってくれた。
☆9☆
これってさぁ…
見込みあるって事なの?
そうだよね?
絶対 そうだよね?
今まで苦だった委員長の仕事も、
全て完璧に、しかも笑顔で こなした。
全部…
淳太くんのお陰だぁ〜!!!
私は完全に舞い上がっていた…
文化祭当日。
私は前日に、女子達と家庭科室で焼いたスポンジケーキを取りに行った。
「ねぇ、委員長!コレどうやって切るの?」
ケーキの切り方も、知らないなんて…
と、思いながらも、
「こうやって、対角線上に切れば大丈夫だよ!」
と、笑顔で答えた。
はぁ…使えない…
私はいつもの通り、声に出さずに悪口を言った。
それは、知らずに顔に出ていた。
でも、私は自分では気付かなかった。
ケーキを持って教室へ戻ると、
「委員長!猫耳とシッポ、どこ?」
「委員長!看板、何で取り付けるの?」
「委員長!ホイップがなかなか できない〜!」
☆10☆
ひとつ ひとつ全て、完璧に対応した。
私って凄くない?
自画自賛していた。
それから、一応 私も、
猫ちゃんの格好をして、お店に立った。
と、言っても、スイーツを盛りつけたりする裏方。
そして、忙しい…
なのに、
「委員長!氷が無い!!!」
〇「あ!分かった!持ってくるね!」
大きな寸胴に氷を取りに行った。
渋々。
氷を山盛りにした寸胴は、ハッキリ言って、重い…
コレって、男子の仕事じゃん!!!
重たい寸胴を持ち家庭科室を出て、階段を上がると、上の方から、聞いたことがある愛おしい声がした。
上の階の踊り場だ…
私は急いで駆け登った!
「ホントだぁ!西校の王子様じゃん!」
そう言いながら、私を追い抜かした女子達。
「淳太くん…ですよね?!」
どこから声を出しているのか?
女子達はキャーキャーピーピー言っていた。
☆11☆
淳「俺、人探しとるんやけど、〇〇って子知らへん?」
「あ〜同じクラスですけど…」
淳「えっ!そうなん?!」
「まさか…彼女じゃ無いですよねぇ?」
淳「え、ちゃうけど…なんで?」
この時点で、なぜだか辛かった。
普通に本当のことを話してるだけなのに…
「や、だってぇ〜釣り合わなさすぎだから〜」
淳「そうかぁ?」
「あの子ぉ〜ちょっとスイーツ作りが得意だからってぇ〜調子に乗っててぇ〜」
淳「そうなん?」
え、チョット待って…
調子になんて、乗ってないし…
「スグ、嫌そうな顔するしぃ〜」
淳「マジで?そりゃあ、ややなぁ…」
ガシャンッッッッ!!!
手が滑って寸胴を落とし、階段に氷をバラまいてしまった。
☆12☆
そうだよね…
私みたいな性格ブス…
淳太くんも嫌だよね…
大きな音が響き渡ったせいで、上の階から覗き込む、淳太くんと女子達。
他にもギャラリーがたくさん。
見世物か…私は…
涙を堪えながら、氷を拾った。
誰も手伝ってはくれない。
私なんか、
私なんか、
………サヨナラ、淳太くん…
☆13☆
淳「お前、しゃ〜ないなぁ〜」
〇「えっ…淳太くん…」
一緒に拾ってくれてる…
淳「アホか、こんなたくさん。」
〇「ご、ごめんなさい。私、ひとりでやりますから…」
淳「はぁ?」
どう考えても、怒ってる声。
〇「ごめんなさい!全部やりますから!行ってください!」
もう…
構わないで…
淳太くんまで、見世物じゃん…
淳「ほんまアホやな。」
〇「…分かってます!」
少し強い口調が出た。
そんなに言わなくても、
私なんかダメな人間だって、分かってるよ…
〇「分かってますから…ほっといてください。」
この場から逃げ出したかった。
でも、大量の氷が、逃してはくれなかった。
淳「〇〇やない。」
えっ?
淳「アホは〇〇やなくて、お前のクラスのヤツや。」
えっ?何を言ってるの?
☆14☆
淳「こんな重いの、〇〇に持たせるなんて、考えられへんわ。」
〇「え…」
淳「俺、持ってやるから、新しいの取りに行こか!?」
〇「え、でも…」
淳太くん…なんで?
「待って待って〜淳太くんが手伝う事じゃないでしょぉ〜」
そうだよね、女子達の言う通りだよ。
〇「大丈夫です。私、ひとりで行きますから。ありがとうございます。」
私は少し頭を下げて、重たい寸胴を持ち上げようとした。
淳「待って!」
淳太くんは、私の腕を掴んだ。
「もぉ〜淳太くん、〇〇が大丈夫って言うんだから、行かなくてイイんだよぉ〜」
淳「なに言うとんねん!さっきから!」
淳太くんが強い口調で女子達に言った。
女子達は、意外な言葉にビックリしていた。
淳「俺、知っとるで!〇〇が、お前らの分まで全部、仕事させられてた事。」
「そ、それは…自主的に…」
淳「ホンマにそう思うてんなら、お前らクズやな。」
淳太くん…
私の為に…
☆15☆
淳「俺、〇〇のそういうトコに、惚れたんや。」
え…マジで…
堪えていた涙が、溢れ出した。
淳太くんは「行こか。」と、寸胴を持って歩き出した。
私は涙を拭い、後を付いて行った。
〇「あ、あのぉ…」
淳「ゴメン。〇〇の立場も考えんと、つい…」
〇「や、そうじゃなくて…」
淳「気にせんでええよ、あんなヤツら。」
〇「ち、違うんです。」
淳「違うって…なにが?」
〇「家庭科室…あっちです…」
淳「へぇ///…ごめんごめん!」
〇「ぷっ!淳太くんって、面白い!」
私は笑っていた。
淳「やっぱ…〇〇の笑顔、素敵やな(笑)」
小っ恥ずかしい事もサラッと言える…
ホント、王子様みたい(笑)
私達は、教室へ戻った。
淳太くんは、重い寸胴を運んでくれた。
☆16☆
淳「〇〇 凄いやん!!!」
私が作った装飾を、人目もはばからず褒めてくれた。
「〇〇には才能があるんやなぁ〜」とか、
「俺も〇〇と同じクラスになりたいなぁ〜」とか、
淳太くんにスイーツと紅茶を出した。
淳「〇〇、一緒に座って!」
〇「え…あ、うん。」
私は窓の外を眺めて座る席の、隣に座った。
窓から見える景色は、かなりの遠くまで見える。
遠〜くの山々の山頂が、薄っすら白くなっていた。
淳「なぁ、〇〇?」
〇「な、なんですか?」
淳「これからは、辛かったら必ず俺に言ってくれへん?」
〇「どうして?」
淳「隠さへんって、約束して?」
なんでか分からなかったが…
とても不思議で…
その言葉はまるで、プロポーズの様に聞こえ…
〇「…………はい。」
気付くと返事をしていた。
☆17☆
淳「ええこや。」
そう言うと、猫耳を避けて、頭をナデナデしてくれた。
〇「ちょ、チョットぉ…///」
皆んなが見ていて、恥ずかしかった。
淳「俺の彼女で、ええな?」
〇「ぅへぇっ?!!!」
淳「ちゃうやろ。『はい 』やろ。」
〇「あ、はいッ!!!」
あ!返事しちゃった…
・・・・・(笑)
淳太くんになら、本音が言える…
「好きです…」
☆fin.☆
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。