第15話

偽装
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2023/09/05 00:00
「やっほ〜!」

「久しぶり〜」

 今私たちが居るのは天音家の玄関前で、今私たちの目の前に居る瓜二つな2人は双子の天音姉妹だ。

 元気に声をかけてくれたのが妹の若葉で、朝早いからか…と言ってももう10時頃だが、若干眠たげに声を発したのが姉の双葉。

 今日は陽のことを聞くために2人の元へやってきた。久しぶりの再会だけど、相変わらずのようだ。

「お久しぶりです。双葉さん、若葉さん。」

「いやぁ響くんおっきくなったね〜!」

「前見たのが5年前?さすが成長期」

「私も久しぶりなんだけどなぁ…?」

 1年ぶりくらいだ。昔の友には何の反応もないのかと釘を指してみたが、白けた様子であしらってくる。

「いやぁなんも変わってないし?」

「大丈夫そう?成長期止まった?」

「余計なお世話だよ!」

 あはは〜と気の抜ける声を同時に漏らす目の前の双子は、玄関を開けて入っていいよ、と手を広げてポーズをとる。

 私も響くんも、そしてこの天音姉妹も一軒家に住んでいるが、多分1番広いのは天音姉妹だし、立地がいいのも天音姉妹だと思う。なにせ天音姉妹のご両親はかなりのお金持ちだから。
 駅近で治安もよく、なんとも住みやすい場所だ。そんな家の玄関は、当然かなり広い。

 白メインでシックな雰囲気に仕上げられた玄関は家族写真や旅行のお土産なんかが綺麗に飾られている。

「お邪魔します。」

「おじゃましま〜す」

「邪魔するなら帰れ〜」

「若葉、そのネタもう古いよ」

 双葉の鋭い一言と共に玄関を通りリビングへ行く。私はもう何度も通った道で、1年ぶりでも変わったところは少ないようだった。
 初めての家だろうと、響くんはキョロキョロ辺りを見回すような失礼な真似はしない。きちんと靴を揃えて、マナーを守る。

「さすが陽の弟だね」

「さすがだね〜。」

「いえ。出来て当たり前のことです。」

 それに気づいたのか、天音姉妹は感心していたようだが、響くんは謙遜する。
 が、姉妹は突然顔を見合わせ、その表情を暗くさせる。

「どうしました?」

「……ううん。なんでもないよ。飲み物用意するから、座ってて。」

「ねぇーさーん、私こうちゃー」

「わかってるよ〜」

「私も運ぶの手伝うよ」

「お、理音は気が利くねぇ」

 私と双葉はキッチンへと移動する。響くんが見えなくなったくらいだろうか、双葉は私を見て不安そうに顔を歪める。

「…どうしたの?」

「変わったね、響くん…そりゃ何年も会ってなかったけど…あんなに静かじゃなかったでしょ…」

「そうだね、たしかに変わった」

 あれはダメな変化なのかもしれないけれど。
 それでも、それは……

「それって悪いことなの?」

「…姉が死んだことによる変化を良しと捉えることは無理でしょ?」

「…自分の心を守ってるだけだよ」

「だけって……」

 紅茶の準備を始めた私の隣で、慌ててカップを4つ取り出す双葉は、心配そうな目で私を見る。

「結局私達も当事者なんだね」

「…そうだね」

 客観的に見て、「響くんが変わった」なんて口が裂けても言えない立場だ。変わったと言うならわたし達も同じことで、響くんも同じことを思っている…かもしれない。

「まぁとにかく、私たちに響くんの変化を否定する権利なんかあるわけないってことだよ」

「…そっか…」

「理音の方が……危ない?」

「………」

 その小さな囁きを、

 私は聞き逃さなかった。

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