第20話

⑳副反応💊⚠️
628
2020/12/26 15:30
百目さんに見届けられ妖魔門を出ると、そこはまるで江戸時代の城下町のような風景が広がっていた。
坂下 桜
坂下 桜
わぁ……!
たくさんの妖怪が、歩く景色に思わず目を奪われた。
私の目には、とても素敵に映る世界だった。
坂下 桜
坂下 桜
はっ!頭巾被らないと…!
私は慌てて百目さんから貰った猫耳ポンチョを装着する。
坂下 桜
坂下 桜
これで…よし、と。
首のところで紐を結んで装着完了。
私は深呼吸をして一歩を踏み出した。





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百目
………………さて、どちら様かな。
妖魔門の入口─────崖の先の空間に繋がる扉を開けた先には、彼がいた。
遅松  オソマツ
遅松 オソマツ
よっ!百目久しぶり
妖魔界三大妖怪酒呑童子、松野遅松。
百目
お粗末じゃないか。
遅松  オソマツ
遅松 オソマツ
なんかそれ漢字違くね?
百目と遅松達6人兄弟は、小さい頃から一緒に育った仲であったが、大人になってからは会う機会もばったり減っていた。
百目
気のせいだ。珍しいな、お前がここから入ってくるなんて
遅松はいつも、妖魔門の出口である妖界口から入ってくる。
だが今日は、崖側(先程桜が入ってきた)の入口から入ってきた。
遅松  オソマツ
遅松 オソマツ
いや〜ちょっとね。そう言えばここから人間の娘入って来なかった?だぁいぶ怪我してると思うんだけど
百目
あぁ、それならたった今送り出した所だ
遅松  オソマツ
遅松 オソマツ
えっ!?今!?
予想外の返事に目を丸くする遅松。
百目
あぁ、若しかして、お前の知り合いでもあったか
遅松  オソマツ
遅松 オソマツ
そうそう。俺んとこの神社で仲良くやってる子なんだけど〜……そのぉ、
百目
……………貴様、牛鬼に油断したな
言わずとも察した百目。
遅松  オソマツ
遅松 オソマツ
あっれぇ!バレてるぅ〜
遅松は舌を出してウィンクして見せた。
別に可愛くはない。
百目
その人間の娘から聞いたんだ
遅松  オソマツ
遅松 オソマツ
やっぱりぃ?酷い怪我だったっしょ
百目
酷い怪我ではあったが、あれは襲われた傷では無かった。山道を転がった傷だろう。
遅松  オソマツ
遅松 オソマツ
あり?じゃあ接触しなかったぽいー?
どんどん自分の予想が外れていくことに、眉根を寄せる遅松。
百目
いや、そうでは無さそうだ。詳しくは聞いておらなんだが…
百目
そんな事より、唐松様に報告はしたのか?
遅松  オソマツ
遅松 オソマツ
うげぇ、わーってるよ。今行くとこですぅ
詰寄る百目に、面倒くさそうに手をヒラヒラと振る遅松。
百目
さっさと行かないか。まだ完全回復に至っていないとはいえ、どこで何をしているか分からなんだぞ。
遅松  オソマツ
遅松 オソマツ
へいへーい
頭をポリポリと掻き、欠伸をする遅松には完全にやる気は無かった。
遅松  オソマツ
遅松 オソマツ
…アイツにあの頭巾持たせたんだろうな?
百目
勿論。ここに来ている人間には必ず渡している。
遅松  オソマツ
遅松 オソマツ
……それで大丈夫かなぁ?
百目
む、あれじゃ不満か
眉を顰め、遅松をキッと睨む。
遅松  オソマツ
遅松 オソマツ
いやぁ?あいつの精気の量確認したぁ?
百目
…そういえばしとらんな。………まさか。あの娘に何をした?
遅松  オソマツ
遅松 オソマツ
別にぃ?お前が作った飴ちゃんあげただーけ
百目
何っ!?幾年か前にお前にやったあの飴玉か!?
遅松の返答に、目を丸くし声を荒らげる百目。
中々取り乱すことの無い百目に驚き、遅松は萎縮する。
遅松  オソマツ
遅松 オソマツ
え?うん、そだけど……。なんかダメだった?
百目
お前!あの飴玉は人間ように作ったものじゃないんだぞっ!!?
遅松  オソマツ
遅松 オソマツ
え゛。若しかして、人間が食っちゃダメだったぁ?
百目
この阿呆が……。
百目は片手で顔を覆い溜息を着く。
百目
いいか?元より、精気が微量の人間に妖怪用の精気増量剤をやったらどうなる?副反応を起こすに決まってるだろう。急激に増加した精気量に耐え切れず、身体が反応を起こすぞ
遅松  オソマツ
遅松 オソマツ
えぇ…若しかしてそれってヤバいやつ…?
焦り出す遅松。
百目
死にはせんだろうが……。お前、その飴玉をやったのは今日か?
遅松  オソマツ
遅松 オソマツ
や、5日…7日とか前?
百目
はぁ……。本当に何もかもタイミングの悪いことだ……
百目はまた溜息を着くと、さっきまで桜が寝ていた布団のすぐ横の棚を漁り始める。
百目
あの飴は急激に精気が増えるのを抑える働きがある。だから精気は徐々に増えていく。あのくらいの娘ならそろそろ反応が出てもいい頃だぞ!?
遅松  オソマツ
遅松 オソマツ
…………くっそ!!








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坂下 桜
坂下 桜
はぁ…はぁ………はぁ…
苦しい、くるしい、きもちわるい、きもちわるい、、
妖魔門から歩いて10分程経った頃、私は民家と民家の間の路地裏でしゃがみこんでいた。
急に目眩や頭痛が自身を襲ったのだ。
症状はどんどん悪化する一方で、もうろくに立つこともままならない。
坂下 桜
坂下 桜
っ……はぁ…はぁ…………
今日は厄日だ。みんなに会えないわ、化け物に襲われるわ、山から転げ落ちるわ………
そう言えば、山から転げ落ちたのに傷一つ無いのは………
坂下 桜
坂下 桜
こんど……おれい…いわなく、ちゃ………
身体が熱くなってきた。熱でもあるのだろうか。
呼吸も苦しい。肺が小さくなったみたいだ。
涙がポロポロと溢れてくる。あぁ、今日は泣いてばっかりだ。
???
…お嬢ちゃん、どうしたんだい?
問い掛けが自分に向けられたものだと気付くのに少し、時間がかかった。
ゆっくりと振り返ると、そこにはねずみの姿をしたような妖怪がいた。
妖怪
…ん?お嬢ちゃん、匂い・   ・が強いなぁ
坂下 桜
坂下 桜
にお…い…?
涙で前が見えなくて、私は伸びてきた手に気付かなかった。
坂下 桜
坂下 桜
ッ…!?
目の前の妖怪は、私のフードを乱暴に剥ぎ取ったのだ。






百目
『いいかい?フードを取ると術が解けるからね。絶対にフードを外してはいけないよ。』









妖怪
やはり…お嬢ちゃん人間だなぁ?
感じ取った。この妖怪には関わってはいけないと。
坂下 桜
坂下 桜
ち、ちが……
妖怪
もう隠したって無駄だよ…。俺ァ、、分かるんだよ。もう何人もの人間を見てきたからねぇ
段々と、妖怪の声も遠くなってきた。
逃げなければと、頭では思うものの身体が全く言うことを聞かない。
妖怪
だが…こんなに精気をむんむんとさせる奴ァ見たことがねぇ……。ヒヒッ、いい道具になりそうだ
その声を最後に、私は意識を手放した。









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                                                       続く……………。

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