その後、教室に戻った私は案の定クラス全員からの視線をプレゼントされた。
ヒソヒソと話している者も居るけれど、何を言っているのかは分からない。
そんな中、一人だけ話しかけてくれたのは他でも無い。
瑠夏だった。
やっぱり、瑠夏は一番の親友だな…。
なんてしみじみ思いながら席につき、「ただいま」と返す。
瑠夏は変わらず笑っていて、特に気にしていない様子だった。
放課後、気付けば教室内は私と瑠夏二人だけになっていた。
鞄を持って、二人で並んで歩きながら下駄箱へ向かう。
その途中で、昼のことについて説明していた。
「そうなんだ」と納得した様に頷く瑠夏。
うーん、と暫く考え込む様な表情をした後、いきなり此方を向いて来て。
瑠夏は中学の頃の事を知らない。
だからか、私だけが余計に心配に思ってしまうのだ。
そんな感情が顔にまで出てしまっていたのか、瑠夏はにっこりと笑って。
半ば引っ張られつつも、そのまま到着。
暫く瑠夏の家には来ていなかったけれど、あまり変わった様子も無い。
確か、親は海外に居るんだっけ。
言われるがままに瑠夏の部屋に連れて行かれ、化粧台らしきところの椅子に座らされる。
ほんのちょっとだけ、可愛くなれるか心配だけど…。
きゅ、急に何を言い出すんだ…。
私が、あの人気な生徒会長さんを好き…?
…無い。絶対。
よく分からないまま、早速作業に取り掛かる。
まずはおさげの髪を下ろして、髪先は軽くウェーブに。
耳の後ろに三つ編みも入れる。
勿論伊達眼鏡も外して、スカートも少しだけ短くして。
最後に上手く化粧をすれば…
満足気に鏡越しに私を見る瑠夏。
その鏡に映っていたのは、まるで別人の私だった。
多分、可愛いの域を超えているって事は、
それ程までにましで可愛いと言えば可愛いのかもしれない、的な感じだろう。
そう解釈して、瑠夏ににっこりと笑みを向けた。
明日、このましになった状態で学校へ登校する。
そう思うと、帰ってからも緊張して心臓が強く脈打っていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。