ふと気付いた時には、となりに美穂は居なかった。
きっと病室に戻ったのだろう。
あの後、泣き声が病室に響き渡り、ばぁちゃんは、とても穏やかな表情をしていた。
無事、じいちゃんに会えたかな…
そんな事を思った。
みんなが落ち着いてきた頃、久我先生が僕に声をかけた。
何故呼ばれたのか分からなかったけど、先生に呼ばれ、廊下に出た。
先生は僕の肩を叩いて、ばぁちゃんの病室へ入っていった。
僕は、ノック無しに美穂の病室をゆっくり開けた。
すると、美穂は窓の外を見つめたまま動かない。
そう呼びかけると、こちらを向いた。
涙をたくさん浮かべて。
僕は頷いた。
そう力なく笑う美穂。
僕は美穂に近づき……抱きしめた。
その瞬間、何かの糸が切れたように美穂は思い切り泣いた。
心からの悲しみが僕にも伝わってくる。
僕も、美穂に気づかれないように、静かに泣いた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。