第18話

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2018/07/26 06:02

ふと気付いた時には、となりに美穂は居なかった。



きっと病室に戻ったのだろう。



あの後、泣き声が病室に響き渡り、ばぁちゃんは、とても穏やかな表情をしていた。



無事、じいちゃんに会えたかな…



そんな事を思った。



みんなが落ち着いてきた頃、久我先生が僕に声をかけた。
久我先生
涼くん、ちょっといいかな?
はい、

何故呼ばれたのか分からなかったけど、先生に呼ばれ、廊下に出た。
久我先生
美穂ちゃんのそばに居てあげてくれないかな?
美穂の…?
久我先生
うん、きっと今、彼女は悲しんでる。
涼くんもだろうけど…一緒に居てあげて。

先生は僕の肩を叩いて、ばぁちゃんの病室へ入っていった。



僕は、ノック無しに美穂の病室をゆっくり開けた。



すると、美穂は窓の外を見つめたまま動かない。

美穂、


そう呼びかけると、こちらを向いた。



涙をたくさん浮かべて。
美穂
ちゃんとお別れ言えたよ。
涼くんは?

僕は頷いた。
美穂
そっか、よかった。

そう力なく笑う美穂。



僕は美穂に近づき……抱きしめた。

泣いていいよ、僕しか居ない。
大丈夫、君には…僕がいるから。

その瞬間、何かの糸が切れたように美穂は思い切り泣いた。





心からの悲しみが僕にも伝わってくる。





僕も、美穂に気づかれないように、静かに泣いた。

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