── 明神像と月。そして、明神像の前側には
霧のようなもの。
同じ。僕の首筋にも柚輝君と全く同じ刺青が
されている。
いつからかな?多分、1歳とか2歳の頃。
いつもはファンデーションで塗り潰して見え
ないようにしていた。
この刺青は夜霧家と明神家を表す。
明神像が明神家。月が夜、そして、明神像の
前のモヤモヤは霧を表し、夜霧家。
明神家と夜霧家は古くからかなり深い関係に
あった。
そして、さっき柚輝君が言った”仕事”とは、
地球爆発を回避させること。
2つの家系には不思議な力がある。
だから、今日起こるかもしれない地球爆発は
僕達の家系が止めることになっていた。
ファンタジー感があるけど、本当だよ。
僕はそう言い、地下から出て、2階の部屋に
入る。
引き出しにあるのは巫女さんが着るような袴
とかいろいろ。
少し愚痴を漏らしながら、着替えると、棚の
上に置いてあった狐の面を手に取り、地下室
に戻る。
柚輝君も着替え終わっていて、狐のお面を
手にして溜息をついていた。
僕は目を閉じ、赤い月を想像する。
赤い月が出る日は、僕が一番嫌いな日。
月を見るだけで血が反応してしまう。
だから、昔もね…
目を開けると、1年間で伸びた前髪が見える。
それは銀髪で僕の秘密。
僕は少し笑いながら、瞳に触る。
そして、付けっぱなしにしていたコンタクトレンズを取った。
柚輝君を見る。出来る限り、聞かないように
意識をすると、運良く心の声は聞こえない。
目指すのは、桜華町の丘の上。
あそこの木が世界の中心になっている。
丘の上で夜霧家と明神家が力を合わせれば、
地球爆発なんてしない。
狐のお面をつけた僕と柚輝君。
僕はもうあの頃に戻れることは出来ない。
友哉達と出会えて、本当に楽しくて楽しくて
しょうがない毎日だった。
みんなのためにもそろそろ突き放さないと…
僕は笑ってるかな?分からないや。
僕達は最短距離で桜華町に着くと、伝統通り
の歌と舞いで止めることが出来た。
柚輝君はお腹がすいたと言って、何処かに
食べに行ってしまう。
僕は特にすることもなく、過去についてを
ぼんやりと考えていた…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。