俺には、小学生の頃から仲良しの親友がいる
親友の名前は渡辺龍輝といい、クラス1の人気者だ。そいつとは、よく遊んでいた。俺の思っていた龍輝との関係は「親友」しかなかった。あの日までは
俺は中学2年生の夏、満員電車の中で痴漢にあった。急に後ろから、お尻に手を当てられた。気持ち悪かった。
俺は、ずっと痴漢なんて、女しかあわない。そう思っていた。当然俺は、今まで痴漢にあったことなんてないから、痴漢のニュースが流れると
そう思っていた。
しかし、実際は逃げられない。声を出すことすら出来ない。駅についても、動けずに固まったまま。
そう思っても、口にはどうしても出せなかった。怖くて怖くて仕方がなかった。
誰も来ない。逃げることすら出来ない。
痴漢男が止めるまで何も出来ない。
すると、お尻にあった手が離れていった。後ろから「痛い!」という声が聞こえた。
その直後、
いつもの聞き慣れた、落ち着く声が、俺の耳に届いた。
龍輝は、助けてくれた。痴漢男の腕を掴んで助けてくれた。俺が龍輝のその行動に、どれだけ助けられたか。その姿があまりにもカッコよくて、俺の中で龍輝との関係が「親友」ではなく、「好きな人」となった。
しかし、俺はずっとこの気持ちに蓋をしてきた。言った瞬間に、この関係が全て壊れてしまうのではないかと思ったから。
-龍輝を好きになって2年-
高校1年生の1月。
龍輝から、幼馴染みの勇波への気持ちを聞かされた。
俺は一瞬、頭が真っ白になり、
返答を誤った。
俺は、自分で気づかせてしまったんだ。
勇波への恋心を。
俺はすぐにそう言った。
言ってほしくなかったから…。
だから、言ってしまったんだ。
龍輝は、凄く驚いた顔をしていた。
-------------キリトリ-------------
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。