私 「悟さん、、、?」
静かな部屋で私の声だけが反響する。
朝起きると悟さんが居なかった。
私 「(もう起きてリビングに居るんだ。)」
と思って着替えてリビングに行くと
悟さんは居なかった。
広い家の中を隅々まで探した。
でも、
何処にも居なかった。
手が冷たくなるのがわかる。
私 「棄てられた?」
その時、堰を切ったように涙が溢れる。
私 「ヒッグ、、、ヒッグ、、、ヒッグ、、、」
涙が止まらない。
何が駄目だったんだろう。
どうして。
どうして。
私 「さ、、、と、る、、、さ、、、、ん」
私 「さと、る、、、さ、、ん」
私は泣きながら悟さんの名前を呼び続けた
それでも、返事は返ってこない。
ふと、扉の方を見ると
鍵がかかっていなかった。
出ていけ。
と言うことだろうか。
私 「ヒッグ、、、ちが、、、ぅ、、もん、」
悟さんはそんなことしない。
私のこと棄てない。
そう思っても不安は消えなかった。
外に探しに行こうか。
もし、出ていったばっかりなら
追い付けるかもしれない。
もう一度ちゃんと話したい。
そう思って、扉をおもいっきり開ける。
久しぶりに浴びる日の光は
とても眩しかった。
でも、それどころでは無かった。
涙で狭くなっている視界で必死に
エレベーターを探した。
すぐに見つかり、
焦る気持ちを押さえながら
扉が空くのを待つ。
ピコーンと、音が鳴って扉が開いた瞬間
突進するように乗り込むと
誰かに抱き締められた。
バニラの甘い香りがして
私の大好きな人だと気がつく。
離さないようにギュッと抱き締めると
抱き締め返してくれた。
私 「さと、、、る、、、さん、、」
涙声で悟さんの名前を呼んだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。