20代くらいの男が、
大学生くらいの女の子の腕を掴んでいる。
私は見ていられず、
ズカズカと大股で彼女たちに近づく。
男が殴りかかってこようとしたが、
私は半身を下げ、それを難なく避ける。
そして──。
私は男の腕を掴んで、
そのまま後ろへ引っ張る。
男は前につんのめるようにして、
顔面から地面に衝突した。
走り去っていく男を
呆れながら見送っていると、
絡まれていた女の子が
私にペコペコと頭を下げる。
頭を掻きながら、
何度もお辞儀をして離れていく
彼女を見送る。
すぐそばで誰かが吹き出し、
私は不審に思いながらも振り返った。
すると我慢の限界とばかりに、
肩を震わせて笑う、
私の待ち人の姿があった。
爆笑している昌の腕を、
私は軽く小突く。
昌は目尻の涙を指先で拭うと、
私の手を自然に握る。
昌が指差したのは、
駅前の大きなショッピングモール。
私は頷き、さっそく建物の中へ入った。
***
まず私たちが入ったのは、
ヘアアクセサリーのお店だった。
そう思って親友の髪飾りを選んでいると、
昌が私の前に桜の飾りがついた
ヘアピンを見せてくる。
昌がなぜかウキウキしながら、
私の髪にヘアピンを次々と当てていく。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。